いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとサンタクロースの宮殿

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 1905年12月17日の『ニューヨーク・ヘラルド』に掲載された「リトル・ニモ」です。

 

 掲載日がクリスマスまであと一週間ほどですので、クリスマスをネタとしたマンガですね。アイシクル(Icicle:つらら)という名の男が、ニモのお供をしています。眠りの国の王に命じられて、ニモにサンタクロースの宮殿を案内しているところです。

 

 アイシクルは、サンタクロースの宮殿をエサにしてニモを夢の国におびき寄せ、このまま眠りの国の王やプリンセスのもとへニモを連れていこうとします。ところがニモは、目の前の美しい光景に(それこそ)夢中で、なかなか歩みを進めようとしません。

 

 ニモはそのうち目が覚めてしまいます。夢のなかで特にピンチもなく、むしろもっと夢のなかにいたかったと思うような夢は、これがはじめてなんじゃないだろうか。

 

 人形、太鼓にラッパ、馬のおもちゃにキャンディと、サンタクロースが準備している膨大な数のプレゼント用品がありますね。これらは当時のクリスマスプレゼントの定番だったんでしょうか。

 

 冒頭部分の、アイシクルがニモを起こして宮殿に連れていく場面では、アイシクルがニモをつねに左から右へと誘います。それはもちろん、コマの順番が左から右に進むというマンガの形式に沿ったものですので、読者はひっかかりなく、ニモとアイシクルが向かうほうへどんどん目を進めます。

 

 その先に、サンタクロースの巨大な宮殿が待っています。読者はニモとともに立ち止まり、アイシクルが指差す先を眺めます。視線の先に建物の正面があり、視線の流れが止められる感じがあります。

 

 次のコマは宮殿内ですね。視線は、幾重にも続くアーチに吸い込まれて左奥のほうに向かったり、高い天井を見るために上のほうに向かったりします。アーチと平行する向きである右にも、視線の経路が作られているように思います。

 

 たくさんのプレゼント用品のところにくると、ニモはなかなか歩きません。コマの順番に逆らって、つねに左側を向いています。アイシクルが急き立てるのですが、ニモはちっとも右を向かない。右を向けば夢から覚めてしまいますからね。