いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと時の神

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 1905年12月31日の『ニューヨーク・ヘラルド』紙に掲載された「リトル・ニモ」です。

 

 年が明けようとするこの日は、時の神が登場です。砂時計と大鎌を持っていますね。また、タイトルが書かれた一番上のコマの左右には、生まれたばかりの1906年と、老いさらばえた1905年が描かれています。右に向かうほど老いていくのですね。

 

 ニモは時の神の家にやってきます。そこで時の神は、年号が書かれた壁一面の収納ケースから数字を取り出しニモに触れさせます。するとニモは触った数字の年齢になってしまう、というわけです。

 

 「1925」と書かれたケースから取り出された数字は「25」であり、ニモはそれに触れて25歳の男性になります。「25」とだけ書かれずにわざわざ「1925」と西暦が書いてあるのは、そのほうが時の神の部屋っぽいからでしょうか。それとも、もしかしたらニモは1900年生まれということなのか...。

 

 「リトル・ニモ」は『ニューヨーク・ヘラルド』紙で1911年まで連載し、その後は『ニューヨーク・アメリカン』紙で1914年まで続きますが、その間、ニモは年をとりません(たぶん)。というか多くの場合マンガのキャラクターは年をとらないですよね。だから上のマンガのように、キャラクターの年齢が変化した姿を見られるケースはそんなにないと思います。

 

 99歳のニモは目が見えなくなり、しかもすでに時の神はいなくなって、絶望に陥ります。この夢は怖いですね。私たちはもう通り過ぎてしまいましたが、1905年当時の人々は、1999という数字にまだ不吉なものを感じていたのではないでしょうか。

 

 子供のニモが、99歳という、もうどうしようもなく老いてしまって寿命が残り少ないところまで来てしまった恐怖に加えて、1999年という不吉な年号に結びつけられてしまった恐怖がやってきます。そりゃ大泣きしますよ。お母さんも抱いてなぐさめるわけですね。