いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとマスケット銃

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 1906年1月7日『ニューヨーク・ヘラルド』の「リトル・ニモ」です。

 

 この日ニモを連れていこうとするのはインディアンたちです。彼らはまずニモの隣に住む女の子を連れ去って、ニモをおびき寄せる魂胆ですね。期待通り、ニモは外に出てきます。

 

 インディアンの顔は、他のキャラクターとは明らかにちがう描かれ方で、目・鼻・唇が強調されてます。マッケイが描く黒人やインディアンはだいたいこんな顔ですね。それにインディアンの立ち姿は猿を思わせます。

 

 もちろん差別的ですが、隠し通すとか、なかったことにするとかはできませんので、むしろ歴史を知るよい機会としたいところです。マッケイのみならず、同時代の多くのマンガではこういう表現は当たり前のものでした。手塚治虫のマンガにさえ見られるものですからね。

 

 ニモは意外と血気盛んというか、おじいちゃんのマスケット銃を持ち出します。ニモがおじいちゃんから教えられたことによると、銃のなかには「月を粉々にするほどの弾(a charge big enough to blow the moon to pieces)」が入っているとのことです。

 

 「マスケット銃ってどんなのだろ...」と思って、ネットでいろいろ検索してみたら、「ライフルではない」「散弾が撃てる」「マミさん(まどかマギカ)が持ってる」と、いろいろ出てきました。ニモのマスケット銃は月を粉々にするということなので、クレー射撃の散弾銃みたいなものでしょうか。

 

 コマ割りで気になるのが、8コマ目・9コマ目ですね。変な形をしています。おそらく、このページはまず「7・8・9」のコマの列と「10・11・12・13」のコマの列のあいだの、階段状の区切りが先行してあり、その後、上部を3つに、下部を4つに分けたのではないでしょうか。ページの区切り方で遊んでいたように思います。

 

 8コマ目と9コマ目の、少し下に突き出ている部分には、崖の壁面が描かれています。人物が崖の縁に立ち、崖の壁面も見えるとなれば、それはもう落下のサインですが、下に突き出ているコマの形がこのサインを強調しているようにも感じます。