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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドと戦争の不安

イエロー・キッド

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 1896年3月15日の『ニューヨーク・ワールド』に掲載された「イエロー・キッド」です。

 

 少年たちがプラカードを持って立っています。彼らの前には剣を持った少年がいて、デモを先導しているようです。星条旗もいくつか見えます。

 

 イエロー・キッドは前景の、中央やや左寄りにいます。寝巻きには「砲撃」と書かれています。そのさらに左には大砲のミニチュアがあり、イエロー・キッドみたいな子供が弁髪の子供を殴っていますね。当時は中国人を排斥する法律があったり、中国人や日本人など黄色人種を脅威とみなす「黄禍論」という言葉があったりしました。

 

 ですがこのマンガは、直接的には「反中・反日」ではなく「反英・反西」がテーマになっています。子供たちが持つプラカードには「打倒イギリス(Down Wit Ingland)」「打倒スペイン(Down Wit Spane)」の文字が見えます。さらにその奥には「なぜイギリスはモンロー主義にエックス線を向けないのか(Why dont England turn de X rays onto der Monroe Doctoring)」という文字もあります。モンロー主義のことをもっとよく考えろという意味でしょうか。

 

 モンロー主義とは、第5代大統領のジェームズ・モンローが1823年に出した宣言で、簡単に言えば「ヨーロッパ列強によるこれ以上のアメリカ大陸の植民地化は認めない」というものです。「打倒イギリス」というのは、「イギリスはベネズエラに干渉するな」という意味で、当時、隣国の英領ギニアと国境紛争があったベネズエラが念頭にあります。

 

 ただ、ホーガン横丁の人々による反英デモは、モンロー主義のこととは別に、彼らアイルランド系の人々がもともと持っている反イングランド感情もあるでしょう。「オールド・イングランド万歳」と掲げられた部屋は、窓が割れています。

 

 「打倒スペイン」のほうは、「スペインはキューバの独立を認めろ」ということですね。結局、1898年にはアメリカとスペインが戦争をすることになります。この両国の対立といえば、ピュリッツァーの『ワールド』紙とハーストの『ジャーナル』紙が発行部数競争をするうえで格好のネタとしたことで有名です(あることないこと記事にし続けたら戦争が始まった、という話さえあるほどです)。

 

 戦争を焚き付けるような扇情的な新聞記事のことは「イエロー・ジャーナリズム」と呼ばれましたが、「イエロー・キッド」と関係あるんでしょうかね。まあ、上のようなマンガがあるので、全く無縁というわけでもないでしょうが、一方で黄色という色自体によくない意味合いがあるそうなので、ちょっとよくわかりません。