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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドと共和党

イエロー・キッド

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 1896年5月17日『ニューヨーク・ワールド』の「イエロー・キッド」です。

 

 政治がネタになっています。わたしは政治の歴史についてはそれほど詳しくないので、このマンガの魅力をどこまで伝えきれるか...。

 

 まず、真ん中の象から説明しますと、象はアメリカ共和党のシンボルですね。背中に掛けられている赤い布に「G.O.P.」と書かれていますが、これも「Grand Old Party」の略で、共和党のことです。タイトルは「党大会に向けて準備をするホーガン横丁」。

 

 1896年は大統領選挙があった年で、このマンガが描かれた直後の6月、ウィリアム・マッキンリーが共和党大会で大統領候補者の指名を受けます(さらには11月に大統領選に勝ちます)。ではイエロー・キッドたちはマッキンリーを支持しているのかというと、どうも様子がちがうようです。

 

 画面やや右上の四面プラカードに「FREE SILVER」と大きく書かれています。フリーシルバーとは「銀貨の自由鋳造」という意味です。当時アメリカはデフレが続いていて、農作物の価格の下落がひどく農民たちは負債を抱えていました。なので、銀貨をじゃんじゃん作ればデフレが止まって借金が返せる、というアイデアは、農民たちの希望になったわけです。これは主に民主党の主張でした。

 

 一方マッキンリーは、金貨に加えて銀貨も鋳造する(金銀複本位制の)フリーシルバーには反対で、通貨を金貨だけにしようと(金本位制にしようと)していました。ではイエロー・キッドたちは誰を支持しているのかというと、共和党の中にもフリーシルバー提唱者がいて、そのひとりにメイン州のステファン・ソンタグ(Stephan Sontagg)という人がいました。

 

 イエロー・キッドの服に「ボクがこのパレードのメインかって? たぶんそうだよ」とあるのですが、メインは「main(主要な)」でなく「Maine(メイン州)」と綴ってあるので、おそらく二重の意味があるんじゃないでしょうか。

 

 二重の意味といえば、画面のいちばん左にあるプラカードにも注目です。

 

 Dis is de Republican movable platform. De planks is all loose an reversable. An kin be removed to suit de winner.

 これは共和党の可動式演壇です。板はどれもゆるくて裏返しにできますし、勝者に都合よく取り外すこともできます。

 

 ここで「演壇」という意味の platform は「公約・綱領」をも意味し、また「板」という意味の plank は「綱領の項目」という意味でもあります。共和党の連中は、最初はフリーシルバーを主張しながら、途中でマッキンリー支持に寝返るやつらが多い...というふうに読めますが、実際にはどうだったんでしょうね。