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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとバレンタインの恋人

眠りの国のリトル・ニモ

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 1906年2月11日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 バレンタインが近いということで、この日はキューピッドが登場です。彼が眠りの国までニモの案内をしようとするわけですが、その前に、バレンタインの恋人たちが集う部屋を通ります。

 

 でもじつはさらにその前に、バレンタインの恋人気取りというか、できそこないというか、恋人と呼ばれたかった人たちというか、恐ろしくも悲しい部屋に入ります。ひとりひとりをよく見ると、時折、文字が書かれていて、例えば右側の巨大な婦人のほおには CHEEK とあります。ほおに「ほお」って書いてて、これなに? と思うのですが、cheek には「あつかましい」という意味があるようですので、そういう人、という意味でしょう。

 

 他にも、GAUK(GAWK:のろま)、STINGY(けち)、RUBBER(rubberneck:じろじろ見る)、PROUD(高慢)、PINHEAD(まぬけ)、WIND(たわごと)、などと書かれています。

 

 興味深いのはニモの視線の先にいる小男ですね。I'M IT(わたしがそれだ)と書いてあるので、マッケイの自画像だと思います。なんとなく似てるし。

 

 かわいい女の子たちが集まる部屋に来ると、ニモはさっそくひとりの女の子に目をつけ、積極的に声をかけます。ところが、いっしょに歩いているうちに、ニモは彼女がボール紙でできていることに気づきます。かわいい女の子だと思っていたら、かわいい女の子の絵だった。

 

 マンガはふだん、(二次元の)絵を(三次元の)人物に見せかけているメディアなので、上のような、人物かと思いきや絵だったというケースでは「だまされた」と思わされます。マンガでは、作中人物と作中人物の絵とを見分けることができないときがありますね。

 

 女の子たちが正面から描かれているのは、明らかにマンガの読者をだましにかかっていると思います。後のコマで女の子を横から見せるための布石ですね。ただ、すでに女の子たちを横から見ているニモがだまされているのは不思議です。それとも、ニモも本来は読者と同じように彼女たちを正面から見ているのだけれど、構図の都合上、ニモを横に配置しているのだろうか。

 

 あるいは、ニモがだまされているのはキューピッドの魔力なのかもしれません。キューピッドが去るとニモはボール紙に気づくわけですから。となると、二次元のものを三次元に見せかけられるキューピッドは、漫画家を表しているのか? こちらが本当のマッケイなのかもしれませんね。考えすぎですねハイ。