いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと人の上に立つ男

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 1905年1月25日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 いきなりとんでもない状況から始まります。「あ!買い物があったんだ、忘れてた」と男がつぶやいて列車に乗り込むわけですが、その間、自分がどこに立っているのかについての説明がまったくありません。

 

 19世紀末から20世紀初頭にかけてのニューヨークの人口増加は著しく、例えばマンハッタン区は、1890年に144万人、1900年に185万人、1910年に233万人と、20年間で90万人くらい増えています。この233万人というのはマンハッタン区の人口が最も多かったときのようですね(Demographics of New York City - Wikipedia, the free encyclopedia)。

 

 どんどん増えていくニューヨークの人々を見て、ニューヨークの人々は何を思っていたのか。エネルギーに満ちあふれた大都市を誇らしく思っていた人もいたでしょうし、慌ただしさにうんざりして静かな暮らしを求めた人もいたでしょう。

 

 このマンガの主人公は、群衆があまり好きではなく、買い物をする前に景気づけの一杯をやってます。そのうち威勢よくなりすぎて、群衆の上で気分よく騒いでいると、警官に声をかけられてしまいます。

 

 ところで、walk over A(文字通りには「Aの上を歩く」)という表現は「Aをこき使う、いじめる」という意味になります。この男は群衆がいやでイライラしてたし、酒も飲んだしで、つい居丈高になってしまったわけですが、あるいは、人口過密の大都市ではだれでもこうなりやすいということなんでしょうか。警官に引きずり下ろされるときには「申し訳ありません、本当に後悔しています」とすぐ謝ってますから、魔が差したんでしょうね。