いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドとコニー・アイランド

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 1896年5月24日『ニューヨーク・ワールド』の「イエロー・キッド」です。

 

 ...なんかこのイエロー・キッド、絵が雑というか、てきとうな感じがするのはわたしだけでしょうか。画面左下にいる、バケツを持った星パンツの子とか、手をつないでる子とか(お兄ちゃんかな)、その右隣にいる青い帽子とズボンの子とか、よくいえば味わいがあるけど、悪くいえば下手クソなんじゃないのこれ...。ただそのすぐ右下の、男といっしょに画面の手前に歩いてくる女の子はかわいいと思う。

 

 場面はコニー・アイランド、遊園地のある場所です。ニューヨークでホットドッグを食べる文化が広まったのは、ここコニー・アイランドの屋台がきっかけだそうです(諸説あるそうですが)。上のマンガを見た感じ、19世紀末にはまだホットドッグは一般的でなかったようですね。イエロー・キッドはいつもより小さく描かれています。遊園地のなるべく広い範囲を描きたいということなんでしょうか。

 

 それにしても、画面に詰め込みすぎですよねいろいろ。ジェットコースターと観覧車とメリーゴーランドと見世物小屋をこの距離で設置したら大惨事というか、そもそも実現不可能なんじゃないか。よく見たら観覧車のすぐ隣に象もいる...。

 

 何もかも、写実的じゃないですよね。この絵は現実を写し取ったものではなく、現実のいろいろを意味するいろいろな記号を、絵の構図を考えながら、紙面上に自由に配置していったという感じがします。ポスターみたいなものだろうか。

 

 気球や凧に書かれている文字や、見世物小屋の壁面の文字も、実際にどう見えるかを考えながら描いてあるとは思えない。この空間の奥のほうや、気球の縁のほうなど、本来なら文字の形が小さくなったり歪んだりする部分でも、読者は難なく読めます。読みやすさのほうが大事なんですね。絵を言語的に理解させようとしています。