いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドとホーボーケン

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 1896年5月31日『ニューヨーク・ワールド』の「イエロー・キッド」です。

 

 イエロー・キッドの顔、いつもとちがうと思いませんか? それもそのはずで、このマンガの作者はいつものアウトコールトではなく、友人のジョージ・ラクス(George Luks)という漫画家なのです。どんな経緯があったかわかりませんが、連載作品の一回分を他の漫画家に任せるっていうのは面白いですね。

 

 タイトルは「ホーボーケンのプレッツェル・クラブに襲撃されるホーガン横丁」です。マンハッタンの西側にはハドソン川が流れていて、そのハドソン川を渡るとニュージャージー州ホーボーケンがあります。人々はホーボーケンとニューヨークとをフェリーで行き来していました。このマンガでも、画面左手からたくさんの人が上陸してきています。

 

 四面プラカードには「ホーガン横丁の悪党どもを身ぐるみはがしてやろうぜ」と、なかなか威勢のいい言葉が書かれています。ラクスはホーボーケンをホーガン横丁のライバル関係に置きたかったんでしょうかね。

 

 当時ホーボーケンはドイツ系の住民が多かったので、もしかしたら、新聞がドイツ系移民の人気を獲得するためにホーボーケンを主題に据えたのかもしれません。

 

 イエロー・キッドの耳を引っぱってる子供の格好がすごいですね。握手する手にはビールジョッキ、服は酒樽、頭にはチューバ。あとこの子は目が怖い。隣にいる背の高い子とともに、今後「イエロー・キッド」で活躍しそうな出で立ちですが、たぶん、残念ながら彼らの出番はこれだけじゃないかなあ。ちょっとよく覚えてませんが、彼らの姿を他のところで見た記憶がないです。