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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドと政治集会

イエロー・キッド

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 1896年7月12日『ニューヨーク・ワールド』の「イエロー・キッド」です。

 

 またもや大統領選挙が主題です。以前は共和党のマンガがありましたが(イエロー・キッドと共和党 - いたずらフィガロ)、今回は民主党マンガですね。ホーガン横丁で民主党の集会が行われるので、みんな集まっているところです。

 

 たくさんのプラカードがあり、さまざまな名前が書かれています。Tillman とかCampbell とか、Whitney とかRussell とかですね。きっと彼らの支持者の名前、もしくは支持しない人の名前なんでしょう。Bill McKinley の名もあります。共和党の大統領候補者ウィリアム・マッキンリーのことですね。彼の勢いを阻止するために民主党は一致団結する必要があるでしょうが、プラカードの名前の多さを考えるとちょっと難しそうです。

 

 プラカードにはGold やSilver という言葉も多く書かれています。これらは、アメリカの貨幣制度を金本位制にするか、金銀複本位制にするかという、大統領選挙の主要な争点についての言葉です。金本位制の立場をとるマッキンリーに対し、民主党の主流はフリーシルバー(銀貨無制限鋳造)を唱えるウィリアム・ブライアン(William Bryan)でした。

 

 もっとも、そのブライアンの名前は上には出てきません。ブラックビアードの説明によると「もともとは民主党寄りの『ワールド』紙だが、ブライアンの支持は嫌がっており、新聞社のそうした態度がこのマンガに反映されている」*1ということです。

 

 たしかに、プラカードには「フリーシルバー、フリーキューバキューバ独立支持)」と書かれた下に「フリーランチ、フリー劇場チケット」とも書かれていて、フリーシルバーを茶化しているようにも読めます。となると気になるのはWhitney の名前です。というのもウィリアム・ホイットニー(William Whitney)という、民主党だけれども反ブライアンの人物がいるのですね。どうでもいいけどウィリアム多すぎるよ!

 

 肝心のイエロー・キッドは「無所属(mugwump)」だそうです。意外と『ワールド』紙の良き代弁者になっているのかも。

 

 上空には「この雲にお名前をどうぞ」と書いてます。となりに「エンタープライズ広告看板会社」と書いてあるので、これはつまり「ここに広告出しませんか」というやつですかね。ホーガン横丁の住民に広告料金払えるとは思えないですが。それとも新聞読者向けのメッセージなんでしょうか。あいかわらず自由なマンガです。

*1:R. F. Outcault's The Yellow Kid: A Centennial Celebration of the Kid Who Started the Comics, Kitchen Sink Press, 1995, p.46.