いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと平穏を求める男

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 1905年2月22日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 1コマ目、男が「眠れない...のどが乾いた...静かな場所に行きたい...」と言って、寝室で服を着始めます。見た感じふつうの寝室なので、部屋の中がうるさいというわけではなさそうです。部屋の外がうるさいのか(大都市なので)、それとも、眠れないのは精神的な問題でしょうか。日中に聞いた言葉や音が、頭の中でこだましているのかもしれません。

 

 それで2コマ目、男がどこに向かったかというと、漂流する筏の上でした。なんでだよ!

 

 どうやら、筏で助けを求めているふたりに対して飲み物はないか聞いたようですね。ふたりにしてみたら悪魔が来たように思ったでしょう。もちろん飲み物などなく、男は諦めて別の場所に向かいます。

 

 次はロシアです。ロシア兵が Get a moveski on youski と言っています。「おまえそこをどけろ(Get a move on you)」の言葉に、ロシア語っぽくてきとうに「-ski」をつけてます。そういえばこの時期、ロシアは日本と戦争中でしたね。

 

 その後、男は北極や砂漠に行きます。静かには違いないのですが、眠るにはちょっと気候が厳しすぎます。そして結局、ニューヨークに戻ってきます。描かれているのは地下鉄ですね。前にも書きましたが、この頃ニューヨークには地下鉄ができたばかりでした。

 

 男は、どうやって地下鉄の内部にやって来たのかわかりませんが、このトンネルの外に出れば平穏な場所があるはずだと考えて、一本のレールに座り、両足を向かい側のレールに乗せて、自身が列車になったかのようにレールの上を移動していきます。なるほど、男はもともとこういう人間離れしたことができるわけですね。ならば筏の上にも難なく行けるでしょう。