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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットとクロロホルム

レアビット狂の夢

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 1905年3月1日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 1コマ目を見ると、どうやら老年の男性をめぐる深刻な状況のようですね。奥さんでしょうか、男性に抱きついて悲しんでいるようです。

 

 人々の台詞はこんな感じです...

 「ああ、オズラーはどうしてこんな法律を作ってしまったのかしら? かわいそうなおじいちゃん、クロロホルムづけにされるなんて」

 「私もいっしょに行くわ、あなた。あなたがいない人生なんて...」

 「元気を出すんだ、私は行くよ、60歳になったんだ」

 

 つまり、この世界では人は60歳になると、クロロホルムを嗅がされて安楽死させられるようです。

 

 男性は警官たちにつれられて行きますが、連行のされ方に納得がいかないのか、警官を殴りながら抵抗します。「ちょっとオズラーに会わせろ!」と叫んでもいますね。しかし結局は、クロロホルムがしみ込んだ綿を向けられて、死んでしまいます。なかなかの悪夢です。

 

 さて、オズラーですよね気になるのは。

 

 当時の有名な医者にウィリアム・オズラー(William Osler)という人がいまして、彼は50代の頃、講演で「バリバリ仕事できるのは40歳までで、そのあとは下り坂ですよ(笑)」とジョークを飛ばし、しかもそのときに、作家アンソニー・トロロプの The Fixed Period (『決められた寿命』とでも訳せばよいでしょうか)という、安楽死を扱った小説を引用したらしい。

 

 すると新聞が「オズラーが60歳でのクロロホルムを推奨」と記事にしてしまいます(William Osler - Wikipedia, the free encyclopedia)。オズラーは大変に立派な医者で、「近代医学の父」なんて呼ばれているそうですが、私はオズラーをこのマンガではじめて知りましたので、私のオズラーの印象は「おもしろいおじさん」ですね。マンガで笑いのネタにされるなんて名誉なことですよ、オズラーも喜んでいるんじゃないでしょうか。嫌かな。