いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドとトロリーバス

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 1896年8月9日『ニューヨーク・ワールド』の「イエロー・キッド」です。

 

 「ブルックリンのトロリーバスに乗るホーガン横丁のこどもたち」というタイトルがついています。バスの中は満員で、バスの屋根の上にもこどもたちがいますね。トロリーポールにしがみつくこどももいます。

 

 イエロー・キッドはトロリーバスにワイヤーをつないで、自転車で曲乗りみたいなことをしています。胸には「今度は本物だよ(Dis time I'm de real ting)」と書かれていますね...これ、どういう意味なんだろう。イエロー・キッドが偽物だったことあったっけ...?

 

 ひとつ思いつくのは、「イエロー・キッドとホーボーケン」(イエロー・キッドとホーボーケン - いたずらフィガロ)ですね。ホーボーケンの不良たちがハドソン川をわたりマンハッタンにやってきて、イエロー・キッドに「挨拶」するというマンガでしたが、このマンガはジョージ・ラクスという、いつもとはちがう漫画家によるものでした。

 

 今回の「トロリーバス」はいつものアウトコールトによるものです。また、舞台が(当時はまだニューヨーク市でなかった)ブルックリンなので、イエロー・キッドが他の都市と交流する点で「ホーボーケン」と共通してると言えます。ホーボーケンの不良との交流はちょっと失敗だったけど、本来のイエロー・キッドは遠征先の観光の目玉で曲乗りできちゃうから! みたいな自己アピールなんじゃないでしょうか。

 

 この紙面で気になるのは、「イエロー・キッド」の掲載の仕方です。斜めに走るトロリーポールや、それにしがみついて体が横に流れる少年を取り囲むかたちで、他の活字コラムが組まれています。これはやはり、まず「イエロー・キッド」の絵があって、その後、活字コラムを隙間に埋めていったんでしょうかね。

 

 これまでも『ワールド』の紙面には、「イエロー・キッド」の絵の周囲に活字のコラムがありました。どれも「イエロー・キッド」とは関係のない小話です(ちゃんと読んでないけど)。

 

 今回の紙面もやはり「イエロー・キッド」とは無関係のものですが、ただ、左上の小話「青ひげの真相(The True Story of Mr. Blue Beard)」に、妻を殺そうとする青ひげを描いたカラーの挿絵があって、これがトロリーポールにしがみつく少年の体の向きと対応していて面白いと思います。内容は無関係ですが、紙面構成の点では関係を持たせることもあるのではないでしょうか。