いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとコンドルは飛んでいく

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 1906年4月29日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 ついに、タイトルのコマのあらすじ説明文がなくなりました。今回はマンガの語り手によるナレーションの代わりに、王様と家来の会話文が、あらすじを説明してくれます。「リトル・ニモの最新情報を教えてくれ、彼はこっちに向かっているのか」「はい、リトル・ニモはコンドルに乗って城壁を越え、現在は家来たちの居住区の上空を飛んでいるとのことです」といった具合です。

 

 家来たちの居住区(the servant's quarters)は、いちばん下のコマに描かれています。鳥瞰図ですね。コマの左上と右上の消失点に向かって、いくつもの建物が整然と並んでいます。

 

 マッケイはむかしミシガン州師範学校の先生に、遠近法の個人レッスンを受けていたことがありました。もともと絵が上手だったのですが、遠近法などの技術を教えられてさらに上手になったのですね。この経験がマンガに生かされています。

 

 物語に戻りましょう。ニモとお供のキャンディはコンドルの背中に乗って、これから王様のいる宮殿に向かうわけですが、このコンドルがなぜかお尻が重くて、なかなか飛び立たない。前回の、フリップのガチョウはかわいげがありましたが、このコンドルは飛べるのが当たり前なためか、飛ぶことに感動がないんでしょうね。

 

 コンドルにはニモとキャンディと、それから御者が乗っています。この御者が意味不明で、とつぜん曲芸をやりだします。キャンディによれば、ニモを楽しませるためにやっているようですが、御者自身は何もしゃべらず、危ないことばかりやっているので、ニモは不安になって「もうやめてほしいよ!」と言ってます。

 

 ニモがキャンディに「宮殿までどれくらい?」と聞くと、キャンディは「500マイルですね」と答えますが、すぐさま御者に「5000マイルですね」(しゃべった!)と訂正されます。5000マイル。調べたところ、成田からサンフランシスコまで5100マイルだそうですから、太平洋横断の規模です。遠いですね。一週間後のマンガ掲載までに到着できるとは思えないです。