いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと怪物ストーブ

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 1905年3月15日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 男性が「なんでこんな寒いんだ...暖房入れてるはずなのに」とつぶやきながら、ストーブのところに向かっています。

 

 次のコマでストーブが待ち構えています。目と鼻と口があるように見えますね。目は窓で、口は石炭をくべるところでしょうか。鼻はなんだろう、メーカー名が刻まれたプレートかな。角のような二本の管は煙突につながっているんでしょう。ストーブのうしろの管はよくわからないですが...。

 

 それにしても愛嬌のある顔です。顔に見えてしまうともう、ひとつのキャラクターとみなしてしまいますね。そもそもこの男性も、ストーブに対して「あの怪物ストーブには毎日1トンもの石炭を食べさせている(I'm done feeding a ton of coal a day to that sheet iron monster)」とか、「大喰らいのバケモノのようだ(Why it resembles a devouring terror)」とか、擬人化の表現を使っています。

 

 あとはまあ、予想できることですが、怪物ストーブは本当に怪物になってしまい、男性が逃げていく、という話です。先日、人や物の姿がどんどん巨大化する話はマッケイの定番だと書きましたが、今回のような、人や物の姿が変容していく話もまた、マッケイのマンガにはよくあることです。

 

 気になるのは、どうして男性は屋上に逃げたのか、ということですね。逃げ場がないだろうに。逃げ場がない方向へどんどん逃げていき、最後は追いつめられる、というのはなんかよくありそうな展開ですが、この男性は屋根を飛び越えて、わりと頑張って逃げてます。一方で、屋上での逃亡劇ですから地上に落下する恐怖がつねにあって、それが緊張感の演出になっている、ということでしょうか。

 

 怪物の顔は、正直あまり怖くなかった。これなら最初の、「愛嬌のある」とさっき書いた顔のほうが、私にはよっぽど怖いです。