いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと一本の髪の毛

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 1905年3月29日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 「なんてステキなんだ、大好きだよ」「わたしもよ、愛してるわ」という夫婦の会話から始まります。「レアビット狂の夢」が、作中人物に何の災難も降り掛かることなく物語を終えることなどありませんから、この仲のよい夫婦がこのあとどうなるのか見物ですね(笑)

 

 2コマ目で、妻が「本当に大好きよ、わたしの...あら、ちょっとごめんなさい、髪の毛かしら」と、夫の服に髪の毛がついているのを発見します。それがとても長い一本の髪の毛で、引っぱると途切れずにどんどん出てきます。こんなに長かったらむしろ髪の毛じゃないと思うんですが、妻はこう言います、「髪の毛よ、長くて緑色の髪の毛だわ、あなた...」。

 

 ご存知の方もいると思いますが、英語で緑色は「嫉妬」を含意することがあり、文脈的にはぴったりです。つまり、妻は夫の不倫を疑い始めてしまったのですね。「あなた...どこかで緑色の髪の女性と会ってたんでしょう」。「いや、ボクはなにも知らないよ」と夫は答えますが、妻は聞く耳を持たないというか、たぶん怒りや悲しさや恐ろしさがごた混ぜになりながら髪の毛を引っぱり続けています。

 

 夫は、妻に不倫を疑われて焦る気持ちと、自分の服から得体の知れないものがどんどん出てくる恐怖とでパニックになります。妻のほうはハートブレイクですね。「もう死にます」とまで言ってる。修羅場です。

 

 最後のコマでも夫婦が登場です。「あなた、うめいてたわよ。ひどく叫んでたし。やめてよ!」「ごめんよおまえ」という感じで、夫は妻の尻に敷かれてるっぽいですね。現実はこうなのか。