いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと汗だくの男(No.100)

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 1905年4月1日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 今日がちょうど100回目の投稿です。これまでブログを読んでくださったすべての人に感謝しております。この調子で200回、300回とやっていければと思ってます。

 

 さて、キリ番をとったこのマンガですが、男が走っています。「車がきた! 急がないと!」と言っていて、見るとたしかに右のほうから車が一両やってきています。車の屋根から線が一本でているのはたぶん、架線から電気をもらうポールだと思うのですが、架線は描かれていませんね。でも線路のようなものも見えますし、やっぱり電車かな。ポールが右上を向いているので、電車がこっちに向かってくるとわかります。

 

 男が急いでいるのは、もちろん電車に乗り遅れないようにというわけですが、彼がなぜ急いでいるのかというと「ウォール街に行けば大金が手に入るんだ(it means big money if I get to Wall street)」ということで、金が目当てです。3コマ目でも、したたる汗を拭きながら「すぐに行かなくちゃ、大金を失ってしまう、そうじゃなきゃこんな走んないよ」とひとりごとを言ってます。

 

 異常が発生するのが二段目からですね。男の汗の量がふつうでなく、他の乗客も驚いて、電車から出ていきます。「鉄道会社を訴えてやる」と言ってる人もいます。

 

 男はものすごい汗をかきながら、それでもウォール街に行かないとと思って、運転士に「運賃払ったんだから連れていってよ」と言って電車を走らせます。...ウォール街の大金とか、訴訟(つまりたぶん賠償金の請求)とか、対価に見合う仕事を求めるところとか、お金の話ばっかりですね今回は。

 

 最終的に電車は水没し、モーターも止まって動かなくなります。8コマ目、奥のほうにいる車掌が「この湖がもうかなり深いので、ボートに乗るか泳ぐかしてください(this lake is getting too deep. Hire that boat or swim)」と声をかけていますが、ボートに乗ったらこれもすぐ沈むでしょうね。沈まなかったとしても、電車に比べればはるかに遅々とした移動となるでしょう。残念ながらウォール街の大金は...。

 

 涙が止まらなくなって池になる、というのが『不思議の国のアリス』にあって、これはかわいらしいんですが、中年の男の汗が止まらなくなって湖になるというのはぜんぜんかわいくないな。しかも金がからんでますからね。