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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと飛んできたフリップ

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 1906年7月1日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 タイトルのコマでは、キャンディとお姫さまとドクター・ピルが並んで立っています。キャンディは「ニモも玉座のすぐ前に来てたのに...」と残念な顔をし、お姫さまは「その薬をフリップに試してみればいいじゃない」と、フリップを薬漬けにするようドクター・ピルに提案し、ドクター・ピルは「そうしよう」と決意しています。やっぱりいつものように、タイトルのコマは、ニモが夢から覚めてしまって眠りの国からいなくなったあとの場面のようです。

 

 ニモは前回のエピソードで、玉座の間に入りました。いまは玉座にいるお姫さまのところへ向かっているところです。キャンディといっしょに輿に乗っていますね。ニモたちといっしょに、アンクル・サムっぽい男性と、白いドレスの女性が、たくさん並んで歩いています。アンクル・サムはアメリカの擬人化ですので、もしかしたら女性のほうも(やはりアメリカの擬人化である)コロンビアかもしれません。

 

 ニモが輿を下りて、いよいよ玉座までもう少し、というときに事件が起こります。③、④、⑤のコマで、光る謎の物体が遠くからやってきます。⑤でドクター・ピルが「だれか乗ってるみたいだぞ(looks to me like someone is with it)」と言ってます。

 

 で、いちばん下の大きなコマで、それがフリップだとわかります。どこで調達したのかわかりませんが、ロケットに乗って見事にニモのところにやってきました。

 

 このコマは、どうもリアリティを欠いていますよね。ロケットはすごい速さでやってきたはずですが、フリップはまるで、床のちょっと上で静止したままのように感じます。スピードを示す線がないことや、瞬時に発話できるとは思えない分量の言葉を発していることも理由かと思いますが、となりで転んでいるドクター・ピルの足の向きが完全にフリップと一致していて、物語世界のなかの因果関係というよりも、読者に対するアピールというか、見世物としての都合をここに感じてしまいます。となりにロケットが落ちてきたら、それとは反対側に体がのけぞるはずじゃないかな、と思ってしまう。

 

 読者はふたりの喜劇役者に目を奪われてしまいますが、じつはこのコマ、お姫さまが描かれています。キャンディの帽子のあたりに小さく、こちらを心配そうにうかがうお姫さまがいる! いよいよ次回、ニモとお姫さまが対面しそうです。