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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと人間大砲

レアビット狂の夢

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 1905年5月13日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 以前にもありましたが、また戦争ネタですね。日露戦争中ですので。

 

 最初のコマで、えらそうな人が「向こうが勝ってるな。こっちはもう砲弾がないぞ。どうするんだお前たち?」と、自軍の劣勢に困っていますね。このままだと、もしかしたら海兵たちをののしり出す勢いです。

 

 すると次のコマ、海兵たちが「もう砲弾がありませんので、ここは武官どの(foreign attaches)にぜひ」と言って、上司に詰め寄ります。彼はアタッシェ、つまりアメリカから派遣された海軍武官のようですね。「おい、わたしはアメリカ国民だぞ!」と言ってます。海兵たちは黒髪でつり目なので、日本人でしょう。

 

 海兵たちはアメリカ人武官を大砲に詰め込みます。「貴様ら手をはなせ、やめるんだ!」「報告してやるからな!」と必死に抵抗しますが(当たり前か)、海兵たちは「われわれは将官に仕えているのではない、ミカドに仕えているのだ」と、日米関係などどうでもいい感じです(笑)。

 

 で、6コマ目で発射されます。飛行中もだいぶしゃべってますが、最後はロシアの軍艦に激突します。激突の直前、アメリカ人武官は「やばい、これハーヴェイ鋼(Harveyized steel)だ」と、ロシア戦艦の装備を冷静に分析しています。

 

 「ハーヴェイ鋼」なんて日常的じゃない言葉だと思いますが、一般読者も意味わかってたんですかね。いまの日本人のはたしてどれだけが海上自衛隊の船の装備を知っているというのか。わずかに軍事マニアあるいは艦これ中毒者が「ハーヴェイ鋼? 敷島だよね」と答えるにちがいない。

 

 6から7コマ目にかけて、および8から9コマ目にかけて、読者は視線を左下に流すわけですが、それはちょうど、この将官の飛行の軌跡に対応しています。9コマ目のあと、彼はおそらく、船の装甲に沿ってそのまま海に落ちていったんだと思いますが、その様子は夢オチ場面で頭を床に打っている姿から推測できます。

 

 ちなみに、人間大砲といえばやはり当時のサーカスの演目でした。ザゼルという女性が最初の人間大砲(1877年)で、その後バーナムのサーカスに出演していたようです(Zazel, the Human Cannonball (Rosa Richter) | Travalanche)。