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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドとビリヤード

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 1896年11月29日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 ビリヤードですね。キャプションには「イエロー・キッドがつれてきた A・モンクが、マクファデン通りのビリヤード大会を盛り上げる」とあります。ビリヤードのことは英語で pool と書いてありますが、ビリヤード台を見るとボールが入る穴がないですね。キャロムビリヤードっていうんでしたっけ? 手玉を突いて2個のボールに当てればいいというルールだったと思います。

 

 イエロー・キッドは台の上に立っています。「優勝したらなにしようかな」と寝巻きに書いてますが、なかなか豪快な突き方をしてますね。背が低いから、台にのぼらないと突きにくいんでしょう。ただ、うしろでリッカドンナ・シスターズがみんな台の上にいて、白と赤のボールをポイポイと頭上に放り投げているので、イエロー・キッドの突き方はそれに比べればとくに問題ないでしょう。

 

 イエロー・キッドがつれてきたという「A・モンク」というのは、サルのことだと思いますが、これがイエロー・キッドと同じ台に乗っています。腰に結わえ付けられている鎖が、画面左にいる女の子に引っぱられて、女の子とサルの真ん中で少年がくびり殺されそうになってます。chalk(滑り止めのチョーク)とchoke(首を絞める)を掛けてるんでしょうか。女の子もサルも笑っているのが怖いですね。

 

 サルのすぐ下、ビリヤード台の側面に「ルール」とあります。読んでみましょう。

 

・ゲーム中は英語禁止。われらはアイルランド人なのだ、英国マニアではない。

・キューの細いほうで突くこと。もちろんキューを使うこと。これはクローケーではない。

・ダブルバレル禁止。不正行為なしでゲームを行うこと。

 

だそうです。英語禁止とありますが、そもそもビリヤード中はめったにしゃべらないはずだが...。アイルランド愛を確認する場所なんでしょうかねここは。ビリヤード台が緑色でアイルランドっぽいですし(ただし貼紙には「台が立派な緑色なのは、住民たちの国籍とは関係ない」と書いてありますが)。

 

 クローケーというのは、ゲートボールみたいなスポーツですね(Croquet - Wikipedia, the free encyclopedia)。木槌でボールを打つみたいです。英国発祥のスポーツなので、そういう意味でも「おまえらアイリッシュなんだからクローケーはやるなよ」ということでしょうか。

 

 ダブルバレル(double barrell)とは銃身がふたつ並んでいるタイプの銃で、つまりキューをふたつ持って使うのはダメということでしょう。あるいは、この言葉は「二重の意味をもつ」という意味もあるので、もしかしたら「いまはアメリカに住んでるがわれらはアイルランド人だ」という、アイルランド愛国精神を墨守しようということなのだろうか。考えすぎかな。

 

 アメリカの初期マンガ史において、移民の存在はたいへん大きなものがあります。まあマンガに限らないでしょうけれどね、移民の存在の大きさは。「イエロー・キッド」のアイルランド系と「カッツェンジャマー・キッズ」のドイツ系は、新聞マンガのあちこちにその存在を確認することができます。