いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドと雄鶏ファイト

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 1896年11月29日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 「イエロー・キッドとビリヤード」(イエロー・キッドとビリヤード - いたずらフィガロ)と同日のマンガです。また、このエピソードは11月22日の「イエロー・キッドと七面鳥」(イエロー・キッドと七面鳥 - いたずらフィガロ)で言及されていた「雄鶏ファイト」の話です。

 

 タイトルには「イエロー・キッドが雄鶏ファイトにふける...結果は惨敗」とあります。イエロー・キッドの対戦相手は帽子をかぶった少年ですね。これまでも何度も見たことのある少年です。名前をテレンス・マクスワット(Terence McSwat)といいます。また、オウムとカエルが見物しています。

 

 イエロー・キッドの雄鶏は灰色で、テレンスのほうはすこし緑色が混じっています。大きさは、テレンスの雄鶏のほうがちょっと大きいか。

 

 第一ラウンド。いきなりものすごい激突で、オウムも「こりゃすげえ」とはばたいています。カエルは「ママー!」と言って早くも退場です。

 

 第二ラウンド。テレンスの雄鶏がイエロー・キッドの雄鶏を追いかけています。壁にルートビアの貼紙がありますね。わたしはルートビアを飲んだことがないのですが、湿布の匂いがすると聞いてちょっと躊躇しています。

 

 第三ラウンド。雄鶏たちは激しく回転運動していて、テレンスの顔が見えません。というかこの距離だとテレンスも無事ではすまないのでは。オウムは「めまいがするよ」と言いながら、イエロー・キッドの頭にとまっています。

 

 そして第四ラウンド。決着がつきました。緑色の雄鶏が灰色の雄鶏のうえに立っていて、灰色のほうは「降参だ、負けたよ、金は持っていきな」と降伏宣言です。テレンスは向こうで「よっしゃあ!」と喜んでいます。オウムは「おれひとりで勝てそうだな」と言ってます。マンガではよくわからないですが、どうやらイエロー・キッドの雄鶏は見せ場なく敗戦したようですね。

 

 最後のコマではイエロー・キッドの寝巻きに「おまえほんとに鳥なのかな...今度からピストル使いなよ。あいつにボクの金もっていかれたな、取り返さなくちゃ」とあり、リベンジを決心しています。テレンスはドルの袋を手にして立ち去ります。

 

 ところで、この雄鶏はこのあとどうなったのか。じつは同日の「イエロー・キッドとビリヤード」の、E・W・タウンゼントによる文章のなかに、後日談が書かれています。抜粋しましょう。

 

...He fought him against every feathered creature in the neighborhood and lost in every encounter. When even the parrot had whipped his rooster the Kid determined to get rid of it. This he did in a manner peculiar to him.

 One evening an honest Italian handorgan man, on his way home, stopped at Kelly's for a glass of beer, leaving the organ on the sidewalk guarded by a monkey. The Kid thoughtfully considered the case for a few minutes and then tied his rooster to the organ and walked off with the monkey.

 Nearly every Flatter in the Row saw this exchange of properties, but when the Italian came out of Kelly's and nearly fell in a fit to find the rooster on the organ and the monkey gone, he could get no information as to the perpetrator of the outrage.

 The Flatters stand together in such cases, so the lamenting organist departed, bearing the proudly crowing rooster on his shoulder.

 

...イエロー・キッドは雄鶏を近所の鳥たちと戦わせたが、そのすべての対戦で負けてしまった。オウムにもやられてしまったので、イエロー・キッドはこの雄鶏にはいなくなってもらうことにした。それはイエロー・キッドならではのやり方で行われた。

 ある夜、正直者で知られるイタリア人オルガン奏者が、家に帰る途中ケリーの居酒屋に立ち寄ってビールを一杯やろうとして、オルガンを歩道に置き、サルに見張りをさせていた。イエロー・キッドはこれを見て、少し考えてから、彼の雄鶏をオルガンにつなぎ、サルといっしょに歩いていってしまった。

 通りの住民たちのほとんどはこの取りかえを見ていたのだが、イタリア人がケリーのところから出てきて、オルガンのそばにサルがおらずかわりに雄鶏がいることに気づいてかっとなったときも、このイタリア人は、犯人がだれなのかについてなにも情報を得ることができなかった。

 ここの住民たちはこういうときは団結するので、嘆き悲しむオルガニストは、誇らしく鳴き声をあげる雄鶏を肩に担ぎながら立ち去るしかなかった。

 

 イエロー・キッドがサルをビリヤード場につれてきた経緯と関連する話だったのですね。イタリア人オルガン奏者は気の毒としか言いようがないです。マクファデン通りは無法地帯ですね。