いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットとチャプスイ

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 1905年5月23日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 いきなり「チャプスイ、育つかしら」「育つさ、いい畑になるよ」と、夫婦の謎の会話です。夫は土にチャプスイの種を植えているようです。

 

 チャプスイ(chop suey)とは、ご存知の方もいると思いますが、アメリカの中華料理ですね(Chop suey - Wikipedia, the free encyclopedia)。肉と野菜を炒めて、スープで煮て、片栗粉でとろみをつけてできあがりです。八宝菜となにがちがうのか、よくわかりません。

 

 李鴻章がアメリカにやってきた(イエロー・キッドと李鴻章 - いたずらフィガロ)ことがきっかけとなって、アメリカの人々が中華料理に関心を持ち、チャプスイはそこで普及したようですが、料理自体の記録はすでに1880年代には存在するみたいです。

 

 マンガに戻りますと、夫婦はともかくチャプスイを土に植えていて、チャプスイが育つよう期待しています。好きなんでしょうけれど、発想がすごいですね。で、2コマ目でなにやら草のようなものが生えていて、「ここはチャプスイ農場になるぞー」と喜んでいます。

 

 3コマ目、チャプスイの生育スピードが速すぎて、夫婦が戸惑いはじめます。「収穫の時期なんだろうな」「もう刈り取ったほうがいいわよ」と言ってる彼らは、ほんとうにチャプスイのことを知っているんでしょうか。

 

 4コマ目ではもはやチャプスイの茎(?)を引っこ抜くことができません。夫は「ちょっと斧を持ってくる」と言ってますね。すでに木の幹のようなものになってしまったのでしょうか。ものすごいスピードで育っています。

 

 これから先が、さらに怖い話になります。チャプスイの木がどんどん大きくなり、ついには森になるのですが、斧を取ってくると言った夫がいっこうに戻ってきません。「ハンク! こたえてちょうだい!」「ハンク! 早く来て! わたし道がわからないわ!」「ここはどこなの? ああ、ハンク! 助けて!」と、妻は夫の名を叫び続けますが、夫は戻らず、妻は森のなかをさまよいます。

 

 ヘンゼルとグレーテルは親に捨てられて森のなかをさまよいましたが、上のマンガが、夫が妻を捨てるために仕組んだ罠の物語だと考えると、よりいっそう恐怖です。妻は、白雪姫に登場する七人の小人のような、手助けしてくれる人たちを見つけられればよいのですが。