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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットとリトル・ブラックとその友人たち

レアビット狂の夢

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 1905年5月24日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 ところどころ網点(ハーフトーン)が使われていて、さまざまな階調のグレーが表現されています。カラーでなく白黒のマンガで網点を使うのは珍しいですね。白黒のはっきりした線画を製版するよりはすこし手間がかかると思うのですが、ちょっと実験してみた、ということなんでしょうか。

 

 ちなみに網版(写真や絵画などの濃淡を再現するための、大小さまざまの網点からなる凸版)は1880年代に発明されました。また、上のマンガで用いられているベンデイ法(線画の一部分に網点を転写して凸版をつくる方法)は、ベンジャミン・デイ・ジュニアが1879年に発明したものです。

 

 さて、マンガですが、いろいろな人が登場しています。最初は男性がひとり酒を飲んでいて、「また夏が来ましたね、この人はそれがうれしくないようですが。わたしは庭に雪の山があるのはもういやですよ」と言ってます。「この人」というのは、だれでしょうね。次のコマに登場する「リトル・ブラック(the little black man)」のことでしょうか。

 

 そしてリトル・ブラックの顔には、網点が使われないのですね。黒のべた塗りで、目のまわりが白いという、おなじみの記号です。

 

 リトル・ブラックは、友人たちを次々紹介します。まずインディアンの羽飾りをつけている「ピンク・リザード(the big pink lizard)」。それから、体中に斑点のある「グリーン・ポテト・バグ(the spotted green potato bug)」。両方とも巨体です。

 

 5コマ目で「カナリア・バード(the striped canary bird)」、6コマ目で「パープル・コックローチ(Mr. purple cockroach)」、そして7コマ目で「ボウル・ウィーヴル(the boll weevil)」。いろいろな名前と、いろいろな体つきの人物がいます。ハーフトーンのおかげで多様性があります。

 

 これはいうまでもなく、当時のフリーク見世物をそのままマンガにした感じですね。最初から酒を飲んでいる男性は、リトル・ブラックが紹介する友人たちと挨拶をしつづけ、さすがに7コマ目になって「...これ、いつまでつづくの?」とでも言いたげな、少し困惑した表情になっています。

 

 ポテト・バグという名前は以前のマンガにも出てきて(リトル・ニモと秘密の地下通路 - いたずらフィガロ)、そのときはジャガイモ虫と勝手に訳しましたが、調べたら「コロラドハムシ」というらしいですね。知らなかった。ジャガイモの葉を食べる虫だそうです。それとボウル・ウィーヴルは「ワタミハナゾウムシ」という、綿花を食べる虫のようです。

 

 どんな虫なのかなと思って、いちおう写真を見てみましたが、虫が苦手なわたしとしては案の定キツい感じでした(コックローチ含め)。でも同時に「当時の見世物小屋の客たちは、わたしが虫を見るときとおなじように嫌なものを見る気持ちだったのかな」と思ってしまい、ちょっと悲しくなった。