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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドとボクシング

イエロー・キッド

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 1896年12月20日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 イエロー・キッドが黒人少年とボクシングをしています。一コマずつ見ていきましょう。

 

 1コマ目のイエロー・キッドの寝巻きには「ねえ、ボクの近くに来なよ、よそ見してるときに殴るのは嫌だからさ」と書いてます。自信たっぷりですね。

 

 キャプションには、対決するふたりがフェザー級で、イエロー・キッドが19ポンド、黒人少年が20ポンドとあるのですが、そんな軽いわけないよね。20ポンドって9キログラムくらいですよ。どういうことだろう。試合は10ラウンドあるそうです。

 

 それと、キャプションは脚韻をふんでいます。1コマ目にはキャプションが7行ありますが、各行の最後の単語を並べると Flats・right・fight・pounds・rounds・dere・square となっていて、音を合わせていますね。また、以下のコマでもすべて押韻してます。なんで詩の形式にしたんだろう。

 

 2コマ目、さっそく黒人少年がイエロー・キッドに一発いれています。キャプションによれば「イエロー・キッドは黒人の顔ぎりぎりにアッパーカットを放ち、黒人はイエロー・キッドの胸に左拳を一撃くらわせた」ということです。まさにその場面が絵に描かれていますね。イエロー・キッドのアッパーカットは挨拶代わりということでしょうか。それとも1ラウンドKOをねらっていたのかもしれない。しかし黒人少年が先手を取ったようです。

 

 3コマ目はイエロー・キッドの逆襲の場面です。寝巻きに「ボクの拳をくらえ」と書かれていて、右拳を相手の顔に当てています。右足を前に出していますので、右ストレートというより裏拳でしょうか。親指がこちら側に見えていますし。

 

 キャプションは、絵に描かれている場面のあとについて記しています。それによると「彼らがクリンチになったあと、ホーガンのヤギがリングに入って黒人の方を向き、宙返りのあと足につばを吐いて、黒人のあごをはずした」とあります。展開がすごすぎるだろう。あごをはずしたというのは、驚きで口があんぐりとなったという比喩なのか、それとも文字通り顎関節脱臼ということなのか。

 

 4コマ目でそのヤギが登場しています。黒人少年に突進していて、少年は苦悶の表情ですね。イエロー・キッドはヤギを止めもせず、むしろ応援しています。キャプションには「黒人少年は倒れ込み、気を失った」とあります。

 

 そのあと、ヤギは「黒人少年の髪の毛をみんな食べてしまってから、角で少年をリングの外に放り出した」そうです。恐ろしいヤギですね。さすがのイエロー・キッドもすこし引いているようです。最後のコマではヤギにグローブを与え、寝巻きで「このヤギが持っていっちゃったよ、ボクはただのキッドだね」と、ヤギを称えています。

 

 ヤギはふきだしで「今度はコーベットとフィッツをつれてこいよ、打ち負かしてやるから」と、当時のボクサーの名前を出しています。キャプションにもだいたいおなじことが書かれています。

 

 ちなみに1897年、コーベット対フィッツシモンズの試合があり、これが映画になっています(The Corbett-Fitzsimmons Fight - Wikipedia, the free encyclopedia)。記録映画をつくりたいと思わせるほどの人気ボクサーだったんですね。マクファデン通りの少年たちにも夢を与えていたことでしょう。