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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドとタバコ

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 1896年12月27日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 タイトルは「タバコと格闘するイエロー・キッド」。ホーガン横丁だったかマクファデン通りだったか、タバコを吸ってるこどもがいたような気がしますが、イエロー・キッドははじめてのタバコでしょうか。

 

 最初のコマ、寝巻きに「ウェイラー将軍のカフェ・ノワール葉巻を吸いまーす」と書いてあるんですが、ウェイラー将軍のカフェ・ノワール葉巻(one of dem general Weyler cafe noir cigars)ってなんでしょうね。

 

 ウェイラー将軍とはスペインの軍人で、1896〜97年にキューバを支配していた人です。アメリカはまもなく、キューバをめぐってスペインと戦争することになりますので、当時の新聞にはウェイラー将軍の名がしばしば載っていたことでしょう。カフェ・ノワール葉巻というのは、強くて苦い葉巻ということかな。よくわかりませんが。

 

 となりでオウムが「キューバの葉巻には気をつけた方がいいぞ」と言ってますが、イエロー・キッドはおかまいなしに吸いはじめ、2コマ目で煙をオウムに吹きかけています。「チューベローズみたいだ」と、よい香りのする花の名を出しています。

 

 しかし3コマ目、様子がおかしくなります。葉巻の煙がイエロー・キッドの頭のまわりをぐるぐると包み込み、イエロー・キッドの顔からは表情が失われています。「あれ、どうしたんだ、気分が悪いな」と寝巻きにあります。オウムは「船酔い(mal de mer)」という言葉を使って、読者に対しイエロー・キッドの気持ち悪さを説明してくれています。

 

 葉巻の先からどんどん出てくる煙の線は、4コマ目でイエロー・キッドを8の字に覆っていて、上の円の中心にはイエロー・キッドの血の気の引いた顔があり、また下の円は、寝巻きを強く握りしめるイエロー・キッドの右手を強調しています。それと、葉巻が大きくなっていますね。

 

 葉巻は5コマ目でさらに巨大化し、イエロー・キッドと同じ大きさになってます。しかもよく見ると、葉巻の上端が横顔になっていて、その顔の口から煙が出ているようです。オウムと黒猫は逃げていってますので、もしかして、本当に巨大化したんでしょうか。それとも、イエロー・キッドが幻覚を見ているのか。あるいは、葉巻の影響力の強さを象徴的に表現したものなのか。

 

 最後のコマ、イエロー・キッドはベッドで寝ています。タバコはもううんざりだと思っているのでしょうか。しかし、壁に貼ってあるメッセージを読むとそうでもないらしいです。「タバコさん...いわく言いがたい、おかしな、ふしぎな草だ。吸うなって言われてもかまうもんか。吸いたくてたまらないよ。早く手にとって吸いたいな。タバコさん、ボクはあなたのものです。ミッキー」...完全にハマってしまってますね(笑)。形式がラブレターです。

 

 人はこうしてタバコにのめり込んでいくんでしょうか。わたしはタバコを吸わないのですが、タバコを吸う人の気持ちが少しわかったような気がします。タバコが吸いたいのに吸えないというのは、恋人に会えない苦しみと同等ということなんだなと思いました。