読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとループ・ザ・ループ

f:id:miurak38:20160422094431j:plain

 1906年10月7日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 ニモとお姫さまは象の背中に乗って、カーニバルへと向かう途中です。「カーニバルはどこでやるの?」とニモがお姫さまに問いかけ、お姫さまは指をさして「あそこよ」と答えています。もうすぐ到着しそうです。

 

 ニモはようやく象から降りられましたが、降りたところがゴールではないとわかると、「まだ道のりは長いみたいだね」と、終わりの見えない旅にすこしうんざりしてきた様子です。お姫さまは「いらいらしちゃだめよ、これからが楽しいんだから」と言ってますね。

 

 3コマ目、中央に車が一台とまっています。お姫さまは「これが最後の乗り換えよ」と、またお付きの人も「王様がお待ちかねです」と言って、ニモを車に乗せようとしています。このお付きの人は、ニモとお姫さまのふたりだけを車に乗せ、自分は車を思いっきり押し出して、下り坂のコースを走らせはじめます。

 

 これは、以前にもありましたが、「ループ・ザ・ループ」ですね(レアビットとループ・ザ・ループ - いたずらフィガロ)。お姫さまは「わたしループ・ザ・ループ大好きなのよ」とずいぶん楽しんでいるようです。一方ニモは「これ止められないの? 降りたいんだけど」と、やはり苦手のようです。「レアビット」のエピソードのときもそうでしたが、女性は絶叫マシンが好きというイメージがマッケイにあったのでしょうか。

 

 このマンガで目を引くのは、カラーリングですね。最初は青空と象の装飾品の赤という組合せからはじまり、ニモたちが乗り換え場所のクリーム色の地面に降り立ったときには、空はどんどん黄色くなっていって、すぐそばの茂みは紫色です。黄色と紫というのは補色の関係ですね。

 

 4コマ目の、緑の茂みと真っ赤な空もやはり補色関係で、双方の色が目立ちます。宙返りの場面では青い空と緑の茂みを背景に、コースの裏側や車の側面の赤が映えます。

 

 それぞれのコマの特性を決定しているいちばんの要素はおそらく、空の色でしょうか。他の部分と比べて空の面積が大きいので。その空の色が一貫性なくころころと変わるために、紙面全体の色とりどりな印象が強いですね。

 

 こんなふうに空の色が脈絡なく変化しても、あまり戸惑わないですね。夢の世界だからなんでもありなんだろう、ということもあるし、あるいは、風景が人物の感情や内面を比喩的に示すということもあるでしょう。ニモは不安や焦りを感じていますが、その精神的な不安定さが空の色に現われていると読めるかもしれない。4コマ目の背景の赤を、わたしは、ニモが危険を察知したことの記号として読みました。

 

 ところでこのマンガには、各コマにお月さまが出ています。変化する空の色にかわって場面に一貫性を与えるものとして、また、広すぎて何もない空のワンポイントとして機能していると言えるでしょうか。それとこのお月さまは、当時ループ・ザ・ループがコニーアイランドのルナ・パークという、月の女神の名を冠した遊園地にあったということをわたしたちに思い出させます。