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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドと鉢植え

イエロー・キッド

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 1897年1月3日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 「イエロー・キッドの種まきとその結果」と題されたコミック・ストリップです。種まきがテーマだからか、コマとコマのあいだにアールヌーヴォー的な植物文様がほどこされています。それと、タイトルのあたりにごちゃごちゃと絵が描かれていますね。こどもの遊びのような感じです。

 

 イエロー・キッドが「花の種」と書かれた本を読みながら、どの花を育てようか思案中の場面からはじまります。オウムが「パンジーにしようぜ」と言っているのを無視して、寝巻きで「ランを育てようかと思うんだ」と言ってますね。なんか、ランって難しそうですけど、イエロー・キッドにちゃんと世話できるのか心配です。

 

 2コマ目、イエロー・キッドは鉢に水をやっていて、鉢からは早くも芽が出ています。寝巻きの言葉は「ビールを使わないってのはうれしいね」で、だからにこにこ笑っているのですね。オウムは「これはスキャンダルみたいに大きくなるぜ」と、いかにもイエロー・ジャーナリズムのキャラクターらしい言葉を発しています。

 

 鉢に植えた花は驚くほどのスピードで成長をつづけており、ヤギが「こいつは特急列車だな」と、そのスピードの舌を巻いています(もしかしたら怪しんでいるのかもしれませんね、むしろ怪しむほうが自然な反応です)。イエロー・キッドの寝巻きには「デイジーじゃないといいな、デイジーはボクひとりでじゅうぶんさ」とあります。daisy に「第一級の人物」という意味があるからこその発言ですが、というか、なにを植えたのかわかってなかったのか...。

 

 4コマ目、オウムが「オレとおなじくらい緑色だな」というくらい、花はだいぶ青々となってきました。イエロー・キッドは「もう少し大きくなったらリズにあげるんだ〜」と、ガールフレンドのことを考えはじめました。さすが、マメですね。

 

 動物たちは、1コマ目から3コマ目にかけて、少しずつ鉢に近づいていくのですが、4コマ目で犬が、そして5コマ目でヤギも、鉢から遠ざかっていきます。黒猫もイエロー・キッドの肩から下りて、鉢と距離をとっています。花はもはやイエロー・キッドの背丈くらいまで生育し、また鉢植えの周囲の空間も広がって、読者はイエロー・キッドたちとおなじようにこの花に注意を注ぐよう促されます。オウムは「ジャーナルの部数みたいに急速に伸びてるぞ、ジャーナルって名前の花なんじゃないか」と、自らの掲載紙を誇った物言いをしていて、すこし余裕なのかな。

 

 6コマ目、花が咲きます。ひまわりですかね。みなが驚いているところを見ると、おそらくとつぜん開花した、あるいはとつぜん顔が現われたのでしょう。

 

 イエロー・キッドの言葉はこうです、「これ夢だよね、だれか起こしてよ、怖くてたまらないから」。イエロー・キッドもこんなふうに率直に恐怖心を打ち明けることがあるんですね。まあたしかに怖いですよこれは。あの勇猛なヤギでさえ逃げてますが、当然ですね。

 

 「これ夢だよね」は It's a big pipe dream の訳で、つまり麻薬が引き起こすような夢ということです。イエロー・キッドならやりかねませんね、タバコの幻覚症状に懲りてないようですから(イエロー・キッドとタバコ - いたずらフィガロ)。夢ならさめてくれ、といえばやはり「リトル・ニモ」や「レアビット」を思い起こします。思わぬ接点があるものです。