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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと玉座エレベーター

眠りの国のリトル・ニモ

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 1906年10月28日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 絵が少しずつちがうコマが並んでいます。マッケイお得意の、コマ撮りマンガですね。王様が腰掛けている場所からニモたちのいるところまで、長いカーペットが敷かれているのかと思いきや、それはカーペットではなくエレベーターでした。3コマ目から6コマ目にかけて、王様とニモとお姫さまは少しずつ、階下に沈んでいきます。

 

 1コマ目ではフリップが王様に対し「いいか、この国でオレを止められるやつなんかいないんだよ」と指をさしながら暴言です。王様は何も言わずただフリップを見つめていて、その横から家来が「まってまって、ここはわたしが」と小走りでやってきます。

 

 お姫さまは2コマ目で「音を立てないで、ニモ、じっとしてるのよ。アイツまだわたしたちのほうを見てないわ」と、ニモにこっそり話をしています。フリップはニモとお姫さまに気づいていないようですね。王様に説教する機会もそうそうないでしょうから、いまはそっちに夢中、ということか。小走りでやってきた家来はフリップに「なにがきみの望みなんだい」と、フリップの言い分を聞く態度です。

 

 家来は王様の横に立ち、フリップの背中に手を当てて、フリップが王様に背を向けるようにしています。そのときに玉座エレベーターが作動しはじめます。3コマ目、エレベーターと床のあいだにわずかな段差ができていますね。ニモがすこし驚いているようです。お姫さまは「息を殺して、アイツ気づいてないわ」と、もうちょっと我慢するようニモに言っています。

 

 家来とフリップは「カーニバルをじゃましないでくれ」「じゃましなければ望みを聞くってのか」「まあわたしの話を聞いてくれよ」「聞いてるよ! だからなんだよ」と交渉中で、その間エレベーターはどんどん下がっていきます。すると徐々に、下のフロアが見えてきます。5コマ目、薄暗い空間のなかに壁の装飾が浮かび上がっています。フリップのことが気になるニモですが、お姫さまは「ほらニモ、きれいでしょ?」と下のフロアを指さしています。なにを見せたがっているんだろう。

 

 フリップは「オレにごまかしは通用しないからな」とすごんでいます。エレベーターにはまだ気づいていないようですね。王様はあいかわらず、フリップのほうをぼんやり見てます。すこし見上げているので、エレベーターが沈んでいく感じがよく伝わってきます。

 

 王様は画面の左上にいるフリップを見つめ、お姫さまは画面の右下を指さしていて、姿勢が対照的ですし、また物語世界の時間は一般的に紙面の左上から右下に流れていきますので、王様は「フリップさようなら〜、わしは先に行くぞ〜」な感じがあるし、お姫さまも「ほら、これから先にはステキなものが待ってるわよ」と、ニモと読者を未来へと誘っているようです。

 

 6コマ目でニモは「すごい!」と、なにか見てますね。お姫さまも「あんなの見たことないでしょ」とうれしそうです。王様はついにフリップに向けていた視線をそらしました。もう安心、さてカーニバルの仕度じゃ、ということかな。フリップはまだ騒いでますからね。

 

 しかしいちばん下のコマ、直前まで家来ともめていたフリップが、突然コマの真ん中に落下してきます。「ごまかしは通用しない」の言葉通り、フリップはだまされずに、ニモたちのところへ現われました。

 

 うえの階からわずかに漏れてくる光が、暗い部屋のなかでスポットライトのような効果を発揮して、フリップとニモ、それにお姫さまを照らし出しています。決定的瞬間! の演出になってますね。まあフリップは「おっと、そんな簡単にだまされるかよ! すぐわかるっての」としゃべってるので、厳密にいえば瞬間ではないですが。