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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと伏せ字

レアビット狂の夢

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 1905年6月17日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 冒頭、男性が「教会に急がなければ。説教の前に会議があるのでね」と、ネクタイをしめながら話していて、うしろから奥さんが近づいてきます。「そうね、でもちょっとお願いできるかしら、このスカートを留めてほしいの」。

 

 夫は「もちろんだよ」と快諾し、妻のスカートのホックに手をかけます。夫はなおも「説教をはじめる前に教会の職員と会わないと」と言っています。この人はおそらく牧師ですね。奥さんは夫の言うことをあまり聞いておらず、「キツいのよこれ」と、とにかくスカートをなんとかしたい。

 

 3コマ目で、この牧師の表情がすこし変わります。「だいぶキツいな、入るのかこれ...こりゃやっかいだぞ...くそ!」と、想像以上のキツさにとまどい、イライラしはじめました。奥さんは「怒らないで」と言って、牧師の夫に冷静さを求めますが、夫はこれ以降、どんどん頭に血がのぼっていきます。

 

 4コマ目では、夫が「なんでこんなキツいんだ! この●●●!」と、伏せ字にするしかない表現でホックをののしっています。ふきだしのなかで、単語とスペースの位置を示す線と点がモールス信号のように並んでいますね。綴りの最初の文字さえも伏せられているわけですが、奥さんが「なんて言葉! びっくりさせないでちょうだい」と言ってますので、まあひどい言葉なんでしょう。

 

 次のコマで夫は時計を見ながら「10時半だ、もう教会に行く時間だが...もう一度やってみる」と言って、ホック留めに再チャレンジする決意です。奥さんは「どうしてそんなに冒涜的になれるのよ」と、さきほどの夫のひどい言葉や、職務をないがしろにするふるまいにあきれ顔です。

 

 夫はさらに悪態をつきます。「いったいだれだ、こんな●●●なホックを作ったヤツは...まったく近頃の●●●なファッションといったら...」「やめて! そんな言葉を使わないでよ」「こんな●●●な服を作った●●●な間抜けを見つけたら、オレはそいつの●●●な顔を殴りつけてやるぞ」「あなたがそんなののしりの言葉を口にする人だったなんて」「この●●●なデザインの良さをだれか教えてくれますかね? なんでスカートはこんな●●●なほどキツいのか、それに●●●」。

 

 8コマ目で奥さんが「待って、だれかいらしたわよ! ドアのところにいらっしゃるわ!」と慌てています。牧師である夫の口汚い言葉をだれかに聞かれてしまうのは、大変に良くありません。しかし、玄関に出た夫は「いったい何の●●●な用があって来たんだ? 出ていけこの●●●なヤツめ」と、伏せ字が収まりません。

 

 来客の女性は面食らったでしょう。「新しい牧師さまにご挨拶に伺っただけなんですが、失礼いたしました」と言って、たぶんこのあと足早に去っていったんでしょうが、この新しい牧師が、今後この地域でうまくやっていくとは思えませんね。会議もすっぽかしてるし。