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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと魔女の変身

眠りの国のリトル・ニモ

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 1906年12月2日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 なにやら、えらそうな人たちが横一列にすわってますね。法廷のようです。手前には魔女のような風貌の老婆と、ピエロ警官(刑務官かな)がいます。

 

 えらそうな人たちはなにをしゃべってるかというと、左から順にこうです。「すごくかわいい女の子に化ければいいのさ、魔女さんよ。そうすればあとは簡単だ」「フリップがおまえを選ぶんなら、あいつはこの国で自由でいられるんだよ」「モルフェウス王はフリップにひどく苛立っており、 この法廷に解決策をお求めになったのだ。おまえは宮殿に行き、その強大な力をフリップに向けよ。さすれば報酬をやろう」「フリップを眠りの国から追い出すことができれば、おまえに若さと美しさを取り戻してやる」「冷やした粘液のグラスを持ってきてくれ、それからインクもたのむ」。

 

 つまり、法廷はフリップ対策を講ずるよう王様に言われたので、魔女を呼び出し、フリップをなんとかするよう魔女に命じているのですね。若さと美というほうびをちらつかせながら。

 

 法廷はどうやら、フリップが王様やお姫さまに近づかないのであれば、あとは眠りの国で自由にやっていいとさえ考えているようです。もちろん眠りの国からいなくなるのがいちばんいいんでしょうが。いちばん右の人は粘液とインクを所望していますが、なにに使うんでしょうね。封書でもしたためてるんでしょうか。

 

 さて、前回ニモはカーニバルの最中にフリップに太陽を呼ばれてしまい、そこで眠りの国が消えてしまいました。今回はそのあとの話ということで、どうやらカーニバルは前回で終わり、ここからしばらく、魔女が主要キャラクターのエピソード群がつづきます。(これまでの太陽の出現も、章が変わる合図として見ることができます。)

 

 魔女は2コマ目でものかげに立ち、フリップを待ち構えています。すると向こうから話し声が聞こえてきて、魔女は「お、来たな」と言ってます。話し声は「ここにいてあんたと遊んでもいいって言ってたぜ」「それは知ってるわよ、けど...」とあります。フリップとお姫さまですね。

 

 3コマ目、魔女の姿を示す線がうすーく描かれているとともに、おなじ場所に少女の姿も描かれています。法廷で言われたとおり、魔女はかわいい女の子に変身して、フリップをたぶらかすつもりです。

 

 まだ魔女の存在に気づいていない一行は、自分たちの今後について話し合っているようです。「オレがあんたといっしょに遊ぶんだよ、ニモにはだれかほかのヤツをつれてくればいい」「わかったわ、ならニモにだれか友だちを見つけてくるのを手伝ってよ」「わけがわからないよ。フリップがいるんならボクは帰る!」という具合です。お姫さま、いくらフリップがしつこいからって、それを言ってはニモがかわいそう(笑)。そりゃあニモも「帰る!」となりますね。わたしは、ニモはフリップと遊べばいいじゃんと思うのですが。

 

 一行は次のコマで(魔女が化けた)少女に出会います。フリップは目を奪われているようです。それを見たお姫さまは「しーっ! フリップったらあの子と友だちになりたいんだわ」とニモに伝え、このときおそらく、この女の子をフリップとくっつけてしまえばいいじゃない! とひらめきます。あるいはもしかしたら、お姫さまはもとからそういうアイデアを持っていたのかもしれない。

 

 5コマ目、フリップは少女に首ったけで、名前を聞いてますね。少女は恥じらいながら、フリップにバラを手渡しています。お姫さまは(たぶんニヤニヤしながら)「ねえフリップ、わたしたちといっしょに来るの?」と聞き、ニモは「フリップがいっしょにいたんじゃなにも見れないよ」などと悪口を言ってます。ほんとは好きなくせに!

 

 フリップは「あー、あのさ、この子もオレたちといっしょだといいと思うぜ、なんていうか、オレこの子が好きっていうか」と、いつもの図々しい態度は影をひそめ、純情そうな口ぶりです。お姫さまは「わかったわ、あなたって気まぐれなんだから。どうぞご自由に」と、ニコニコしています。ニモはそっぽを向いてますね。この6コマ目ではだれも少女のことを見ていないのですが、じつはこのとき、少女の姿は薄れ、老婆の姿がぼんやり見えています。

 

 魔女は次のコマで完全にもとの姿をあらわしましたが、依然としてフリップたちは老婆がそこにいることに気づいていません。フリップは「怒るなよ、彼女をつれていったっていいだろ? あんたにはニモがいるじゃないか」と、さっきのセリフとは逆のことを言ってますね。お姫さまはフリップに背中を向けて歩き出し、ニモの姿はほとんどコマの外に出ています。

 

 8コマ目、フリップは急に変なポーズになってます。ふきだしには「うわっ、だまされるところだったぜ! 猫の死体じゃねえか」とあります。ほんとだ、フリップは猫をもってました、ぜんぜん気づかなかった。そう思ってコマを戻ってみると、6コマ目でフリップが手にしているバラ、すでに変形がはじまっています。少女⇔老婆の変身に気をとられていたなあ。

 

 老婆に戻っていた魔女は8コマ目で再び少女に姿を変えつつあり、9コマ目では完全に少女になっています。「わたしがあげたバラを、あなた捨てたのね」と言っていて、そばにはバラが落ちています。フリップは「これは一体どういうことだ...あ、ごめん!」と、混乱してますね。魔女は見事にフリップをだましています。若さと美は戻ってくるでしょうか。

 

 お姫さまは「あのふたり、すごくおもしろいわ。ねえフリップ! お友だちをつれてきなさいよ」と、フリップの混乱ぶりと少女のふしぎな存在感とを感じとっています。それとも魔女のことを知っているんでしょうか。お姫さまとニモは階段を上がる途中で、ニモの夢オチのコマを考えた配置です。