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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドとドイツビールで乾杯

イエロー・キッド

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 1897年4月4日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 「イエロー・キッドがドイツに攻め込む」というキャプションです。ただ、わたしは一見して「あ、ドイツっぽい」と思ったんですが、なんでだろう。

 

 ひとつはビールジョッキでしょうか。背が高くてふたがついているカップですね。いろいろなデザインのものがありますが、画面右下のものは大きすぎて、こどもが中に入ってしまいそうです。「アイルランドに乾杯...そんなバカな!」と書いてますね(このフラクトゥーアの書体は読みづらい...)。

 

 イエロー・キッドもふたつきジョッキを持っていて、またもう片方の手にはソーセージを持っています。これもドイツっぽい。さらに首にはソーセージとプレッツェルを組み合わせたネックレスです。

 

 寝巻きには「このおいしいビールを飲みつづけるんなら、この服をゆるめてもらうか伸ばしてもらうかしなくちゃ」とあります。寝巻きなんだからもう十分ラクな服だと思いますけどね。それにしても、いやードイツ行きてえ。ビール飲みたいわー。

 

 画面中央から左のほうには、恰幅のいい男性が何人かいます。眼鏡してる人が多いですね。この人たちもなんとなくドイツな感じがするのはわたしだけでしょうか。中央の男性は、兜にランスという騎士の出で立ちの黒人少年を肩車していますが、この子の頭上に立つ黒猫のセリフは見逃せません。「あんな二日酔いにはなりたくないね(I hope I wont git dat ole katzenyammer)」。

 

 最後のカッツェンヤンマーという言葉、正確には katzenjammer という綴りですが、ドイツ語で「二日酔い」を意味します。で、この語は Katze「猫」と Jammer「むせび泣き」から成り立つ言葉で、だから上の言葉は、黒猫が「むせび泣く猫にはなりたくないね」とクールにつぶやいてるという面白さがあります。

 

 さらに面白いのは、「カッツェンジャマー・キッズ(The Katzenjammer Kids)」というタイトルのマンガがまもなく『ニューヨーク・ジャーナル』ではじまるということですね。いたずら好きのこどもふたりが、お母さんに悪ふざけをして叱られるという物語のマンガです(二日酔いのこどもたちというわけではありません)。

 

 黒猫の視線のさき、画面左端に、やたら大きな赤ちゃんがふたり、樽のうえに乗ってジョッキを囲んでいます。そのうちひとりのオムツには「フリッツ」と書いてるのですが、じつは「カッツェンジャマー・キッズ」のこどもたちは名前をハンスとフリッツというのです。なんという一致か。黒猫は「あのカッツェンジャマー・キッズのようにはなりたくないね」と言っているのかもしれません。