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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと偽サンタクロース

眠りの国のリトル・ニモ

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 1906年12月16日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 今回も魔女が登場です。3から5コマ目に、魔女が老婆の姿であらわれています。しかしフリップの前ではかわいらしい少女の姿に変身していて、フリップはだまされているわけです。

 

 一行はサンタクロースに会いにいく途中です。もうすぐクリスマスですのでね。フリップは「サンタクロースの家までどのくらいあるんだ? 10マイルも歩くつもりはないぜ」と、さっそく注文です。お姫さまは「またはじまった!」と、文句ばかり言ってるフリップに嫌気がさしています。

 

 2コマ目、少女の姿が老婆に変化しつつあると同時に、ニモたちのすぐ向こうに立っている木に、うっすらとサンタクロースの影が浮かび上がっています。思うに、魔女は周囲の物のかたちを変化させる力を持っているものの、変化させられるのはつねにひとつだけで、木をサンタクロースに変えているあいだは自分は老婆の姿に戻ってしまうんじゃないでしょうか。

 

 一行は、一見したところ老婆の姿に気づいていません。お姫さまが「ねえ! いやなら来なくってもいいのよ!」と苛立ちをフリップに向け、ニモもフリップを見ていて、フリップは「やれやれ」といった表情でいて、注意の中心がこの三人の内側にあります。

 

 3コマ目でサンタクロースが完全に姿をあらわし、ニモたちのほうににこやかに歩み寄ります。お姫さまは「わあ! サンタクロースよ!」と驚きの声をあげ、フリップとニモもサンタクロースのほうを向いていて、だれも老婆のほうを気にかけていません。

 

 サンタクロースはフリップを抱き上げます。いつもは葉巻を吹かして傲然としているフリップですが、抱き上げられているところを見るとこどもらしいですね。フリップはとつぜんあらわれたサンタクロースに夢中で、「やあニック(サンタさん)! 元気かい? あんたに会いにいくところだったんだよ」と、やっぱりこどもらしく喜んでいます。サンタクロースは「そうかい? 来てることは知ってたよ、フリップ!」と話を合わせてます。

 

 お姫さまはニモおよび読者のほうを向き、口に人差し指をあてながら「あいつ、本物のサンタクロースだと思ってるわ(笑)」と、じつはこのサンタクロースが偽物であることを知っています。前回もそうでしたが、お姫さまとニモは、少女がじつは魔女であることを知っているのです。みんなでフリップをだましているのですね。

 

 サンタクロースはフリップに対し「きみはお姫さまの新しい友だちなんだってね」と、フリップにとってじつに都合のいいことを言うので、フリップも「そう! そうなんだよ。ちゃんともてなしてくれなきゃ困るぜ」と調子に乗っています。

 

 お姫さまは「行きましょう、ニモ。あいつのことは放っておいて」と、フリップを残してふたりだけで先に行こうとしています。しかしニモは、フリップのことが気になるのか、それともサンタクロースのことが気になるのか、なかなかお姫さまのほうを向いてくれません。

 

 フリップに「ちゃんともてなせ」と言われたサンタクロースは、まるでその言葉を合図にしたかのように、「そうかい、うれしいよ」とか言いながら、上半身をうしろにひねってフリップを放り投げるというもてなしをします。まったく予想していなかった動きですので、フリップも見事に宙を舞ってます。お姫さまは「ひどすぎて見てられないわね、ニモ。そう思わない?」と、6コマ目から消えようとしています。ニモの背中をぐいぐい押していそうですね。

 

 7コマ目、すでに少女の姿になっている魔女に向かって、フリップが「ねえ! お嬢さん! ちょっと話があるんだけど」と言ってます。フリップもこの少女が魔女だとうすうす感づいているようです。お姫さまはニモの手を引きながら「気にすることないわ、ニモ。あいつはああなって当然よ。それより本物のサンタクロースが待ってるわ」と、ニモを急かしてます。お姫さまはいつもいつも、ニモをフリップから引きはがしたいと思っていて、かわいらしいですね。

 

 それにしても、この魔女はぜんぜんしゃべりませんね。少女のときにはしゃべるんですが、老婆のときには何も言わず、ニモたちのそばにぼーっと立っているばかりで、不気味です。

 

 それと、今回はニモもほとんどしゃべってません。しゃべってるのは夢オチのところだけで、夢のなかでは一言もなしです。フリップたちが気になるものの、見たいものを「見たい」とお姫さまにはっきり言わず、お姫さまにうながされるまま歩いてしまっていて、どちらかといえば状況に対して消極的というか受け身というか、自己主張がないですね。まあフリップとお姫さまがけっこう自己主張するタイプですので、気圧されているのかも。