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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとメリーちゃんの羊

眠りの国のリトル・ニモ

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 1907年1月6日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 さっそくですが、フリップの言葉から。「やあ! ちっちゃな1906年くんは寝かせてきたのか?(Did you put little 1906 away?) 見ろよ、あの子のためにもってきたものがあるぜ」。...これ、「1907年くん」のまちがいかなと。前回のエピソードで、年老いた1906年がどこかに行ってしまい、入れ違いで1907年の赤ちゃんがやって来たので、フリップはその赤ちゃんにプレゼントをもってきた、ということですね。

 

 フリップがもってきたのは、白い子羊です。お姫さまが「かわいい子羊ね!」と喜んでいます。で、フリップは次のコマで得意げに「ああそうさ、メリーの子羊だよ。メリーがこれを赤ちゃんにあげたいってさ」と言っています。

 

 メリーというのは、フリップのとなりにいる少女のことですね。これまでも登場していますが、ここでメリーという名前が判明しました。2コマ目ではメリーの姿が薄くなり、と同時に老婆の影が浮かび上がっています。メリーは本来は魔女で、偽りの姿でフリップをだましつづけています。

 

 魔女のほんとうの姿が明らかになるとともに、子羊は大きなライオンの姿に変わろうとしています。そして3コマ目で、老婆とライオンがその姿をはっきりとあらわしました。フリップはそれに気づかず、ニモたちに「メリーともっと親しくなれよ、彼女かわいいだろ」と言うのですが、彼女が魔女だと知っているお姫さまは「メリーじゃなくて年寄りの魔女でしょ」と、こっそりニモに伝えています。というかニモもそのことは知っていたと思いますが。いずれにせよ、ニモとお姫さまはメリーと打ち解けるつもりはないようですね。

 

 4コマ目、フリップはライオンの存在に気づきます。「うわあ! こいつどこからきやがった?」という言葉の、「うわあ!(WOW!)」が大きく書かれていて、驚きの大きさが示されています。ニモもお姫さまも驚きの声をあげていますね。一方、魔女はふたたび少女メリーの姿になるところです。

 

 以前わたしは、この魔女の魔法は、一度にひとつのものしかそのかたちを変えられないのではないか、同時にふたつ以上のもののかたちを変化させることはできないのではないか、と仮説を立てていたのですが、このコマでは魔女が少女の姿になろうとしつつも、ライオンはそのかたちをとどめたままですので、どうやら仮説は外れたようです。魔女がレベルを上げてきた。

 

 フリップは5コマ目で「おれを怖がらせようったってそうはいかないぜ! おれにまかせな」と言っています。ライオンを始末しようとしているのかもしれません。ニモとお姫さまはただ慌てているだけです。彼らに少女メリーの姿は見えているはずですが、これが魔女の仕業だと冷静に考えられないのでしょう。

 

 次のコマでフリップは、最初のコマからずっといる、奇妙な格好をした人を怒鳴りつけます。「おい! おまえ!! 銃を持ってるやつ! 起きろ! その銃で仕事にかかれよ!」。この人は、なんなんでしょうね。顔はステレオタイプの黒人描写で、服装は見世物のコスチュームで、最初からずっと目を閉じ、両手をうしろにまわしています。衣服の前にふたつ、なにがくっついているのかなあとは思っていたのですが、銃だったのか。そういえば帽子には「護衛 guard」と書いてます。

 

 フリップはこの謎の人物に、ライオンを銃殺するよう命じ、でも彼がなかなか動かないので、フリップはしびれを切らしたのか「これはどんな銃だ?」と彼の銃をひとつ手にとり、8コマ目で「くたばれ!」と言い放って銃をライオンに向けます。

 

 このときのお姫さまなんですが、じつは、ニモに対して「怖がってるふりをするのよ」と言ってます...。ニモは「ふりだって? ボクは怖いよ」とどうやら本気で怖いようなんですが、お姫さまの4コマ目以降の驚きようは、演技だったのでした。あのドライなお姫さまでも怖がることあるんだなあ、とか思ってたわたしは、まんまとだまされたわけですね。

 

 フリップが銃口を向けるその先では、老婆が少女に変身する途中で、フリップは魔女に気づいてしまうのでは、という場面ですが、結局フリップは気づかなかったのかな。

 

 そして次のコマで、ライオンはとつぜん子羊に戻っています。魔女の魔法は、もののかたちを変化させるとき、2・4・6・8コマ目のように変化前後の姿がどちらもぼんやりとあらわれていて、変化の過程が示されているのですが、8コマ目から9コマ目にかけてのライオンから子羊への変化は一瞬です。魔女がさらにレベルを上げてきました。

 

 フリップがもっている銃は暴発しています。とはいえフリップはただインクのようなものを顔に浴びているだけですが。少女メリーが「わたしの子羊ちゃん(lammy)撃とうとしたでしょ」とフリップをなじり(からかい?)、フリップは「殴ってやるぞおい!(I'll lammy you!) お嬢さん!(Young lady!) これおまえの仕業だろ!」と、ついに、メリーが怪しいことに気づきました。

 

(フリップは「お嬢さん!」と怒ってるんですが、まさかこれ、メリーじゃなく護衛のことを言ってるのだろうか...コスチュームがスカートっぽいので、もしかしてこの護衛も女の子だったりするのかな、それにニモが「護衛がもってきたのはおかしな銃だね」と言っていて、このおかしな銃が護衛によってもたらされたことを指摘しているのも気になる...)