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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと魔女とサイ

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 1907年1月13日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 フリップにさんざんいたずらを仕掛けてきた魔女でしたが、前回ついにフリップにばれてしまい、フリップと魔女がさっそく1コマ目で追いかけっこを展開しています。

 

 コマの左のほうで、お姫さまとニモが彼らを見ながら「フリップったら、怒ってるわね」「無理もないよ、ボクだって怒ってるもの」と会話しています。ニモはフリップに同情してたんですね。フリップは「おれの顔にインクを吹きかけといて、逃げられるとでも思うのか?」と、あたりまえですが激怒してます。よく見ると顔にインクがついたままです。

 

 あたりは太い木々が立ち並ぶ場所で、地面は雪ですね。なかなか走りにくそうですが、激情に駆られたフリップは、少女の姿の魔女を懸命に追いかけています。少女はつかまるまいと、太い木の幹にそって画面の奥のほうにむかいます(2コマ目)。

 

 魔女であることがフリップにばれてしまったので、お姫さまは「あの魔女はフリップをこの国から追い出すことができそうにないわね」と、戦力外通告をほのめかしています。それに対しニモは「じゃあどうして魔女はあきらめてしまわずに、フリップにつきあってるんだろ」と答えます。なるほどたしかに。大きな鳥にでも変身して逃げればいいのに、魔女は少女の姿のままですね。フリップは「かわいい女の子だったかと思いきや、すぐに年寄り魔女になりやがる」と言いながら追いかけてます。

 

 で、次の3コマ目でふたりは木の幹の向こうからこちら側に走ってきていますが、魔女の頭上のあたり、木の幹の筋がすこし変化しています。

 

 ニモとお姫さまは、いつのまにか画面の右側に移動しています。太い木をこどもたちが取り囲んでいるようなかたちになっていて、木が主題だぞと読者に教えているようでもあるし、また追いかけっこの半時計回りの運動が強調されているようにも思います。

 

 「もうだまされんぞ!」と追いかけるフリップに対し、お姫さまは冷ややかに「フリップは魔女をつかまえられないと思うわ、わたしたちは雪の宮殿に行きましょう」と言って、ニモをこの場から連れ出そうとしています。

 

 このお姫さまの発言は、さっきから魔女との間合いをいっこうにつめられないフリップに見切りをつけたのか、それとも変化しつつある木の幹に気づき、魔女が策を講じていると思ったからなのか、どちらでしょうね。いずれにせよお姫さまは、ふつうの人間にはない、先を見通す力がある感じがする。

 

 4コマ目、木の幹がかたちを変えていくなか、追いかけっこはまだつづいています。「だまし合いなら負けないぜ」と追いかけるフリップ、だまったまま必死に逃げる魔女、そして「ほっときなよ! もうだましたりしないはずだから!」とフリップに声をかけるニモ。お姫さまはフレームから立ち去りそうです。興味ないのかしら。すこし笑ってますが。

 

 木の幹の模様はどんどんと姿を変え、5コマ目でサイがあらわれました。ニモも「あの木!」と気づいたようです。追いかけっこはこのとき木の幹の向こう側で行われていますので、フリップはまだ気づいてません。こちら側にまわってきたときにどういう反応を示すのか楽しみです。しかしお姫さまは「あれは魔女の仕業よ、でもフリップはびっくりするかしら」と、あれ、意外とフリップを買っているのかな。

 

 こちら側にまわってきたフリップは、ふつうにびっくりしています(笑)。なんという典型的な驚きのポーズか。たしかに目の前で巨大なサイが口を開けていたらびっくりするけれどもね。サイの顔の表情はどこか不気味です。で、サイの背中でいつのまにか魔女が老婆の姿になっています。なんともいえない表情ですね。あいかわらず一切しゃべらないし、顔は土気色で、どこを見ているのかもよくわからない。

 

 ニモは「あの魔女、好きじゃないな。家に帰ってくれないかな」と言ってますが、まあ無理もないですね、不気味だし。もしかしたら、このエピソードでほんとうに魔女とお別れの可能性ありますよ。というのも、お姫さまが「氷と雪の宮殿に行きましょう、フリップはついてくるわよ」と言っていて、物語のステージが変わりそうなんですよね。