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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと切ない魔女(No. 200)

眠りの国のリトル・ニモ

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 「いたずらフィガロ」200番目の投稿は、1907年1月20日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 最初のコマ、中央よりわずかに右に、ニモとお姫さまがたっています。場所は建物の階段の中ほどですが、屋外で、残雪が各所に見られます。お姫さまは、彼女よりも右側にたつ家来と会話しています。「こちらは友人のニモです。ジャック・フロストさんはいますか?」「ジャック・フロストは、うつくしき氷の宮殿の玉座であなたがたをお待ちです」。

 

 ジャック・フロストとは(前にも言ったかな)厳しい寒さを擬人化した表現で、日本語だと「冬将軍」がいちばんそれに近い表現でしょうか。フロスト(frost)自体は「霜」という意味ですので、霜将軍とか、霜男・雪男・冬男とか、まあいろいろな訳が考えられそうです。

 

 ニモとお姫さまと家来はコマの右側で向かい合って話をしていますので、読者の注意がコマの右側に導かれます。月明かりも彼らを照らし出していますね。で、注意の重心がコマの右側に傾いたバランスをとるかのように、コマのいちばん左側に、ふきだしが配置されています。ふきだしのしっぽはコマの外を向いていて、「来い! プリンセスのところに行くぞ、おまえを追い返すんだからな」とあります。フリップと魔女ですね。

 

 2コマ目、フリップの背中が見えてきました。「来いっての! おまえにはもううんざりだよ!」。お姫さまは「あまり寒くしすぎないよう、ジャック・フロストに伝えてくれるかしら、スノー」と、スノーという名のこの家来にお願いし(そういえばあたまに雪玉のようなものが)、スノーは「階段をのぼってください、そこでアイシクルが待っていますので、彼に説明していただければ」と、別の家来の名前をだしています。アイシクル(icicle)とはつららのことです。

 

 フリップは、いやがる魔女をむりやりお姫さまのところへ連れ出してきました(3コマ目)。「さんざんおれをばかにしやがって」と、前回からずっと怒ってますね。そういえば前回、フリップはサイに驚いたあと、どうやって魔女をつかまえたんでしょうね。魔女は逃げる気がなさそうでした。逃げる時間はあったはずなのに、周囲のもののかたちを変えてフリップや読者を驚かせるのが楽しかったとしか思えないです。

 

 今回も、4コマ目でフリップがお姫さまたちのほうを向いて「この女の子を...じゃない、この年寄り魔女を追い返してくれよ」と言っている間に、自らを徐々にサルに変化させています。

 

 お姫さまは「なによ、あなたがつれてきたんじゃない」と、至極当然の返答とも思えるのですが、しかしたぶんフリップが魔女をほっといても、魔女はのこのこやってくるだろうとフリップも思ったんでしょうね。だから、お姫さまに「魔女は帰れ」と言ってもらいたいのでしょう。

 

 魔女、さみしいのかな...。変身してみなの気を引きたいのか...。

 

 魔女は5コマ目で完全にサルの姿に変身しました。おそらくニモもお姫さまもサルに気づいているはずですが、コメントはないです。フリップは「魔女に帰れって言ってくれよ」とお姫さまにお願いしています。もしかしたら、にぎる手の感触から、魔女がいまサルであることを知りつつも、めんどくさくて振り向いていないのかも...。

 

 お姫さまは「あなたがつれてきたんだから、あなたが追い返しなさいよ! わたしたちはジャック・フロストのところに行くから」と、もうフリップも魔女もめんどくさい感じです。

 

 フリップも「わかったよ、おれは出ていくぜ。見ろよあいつを! もう耐えられない、昼間の世界に戻らせてもらう。またな!」と、やはりめんどくさい感じです。ライバルのニモと握手するほどに魔女がめんどくさくなってます。

 

 こんな切ない魔女をみることになろうとは。これだったら、前回のエピソードを最後に魔女とお別れでもよかった。魔女は次回も登場するんでしょうか。魔女は名誉挽回できるのか、魔女に春は来るのか。...来ないでしょうね、これからジャック・フロストに会いにいくんだから。