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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとトボガン

眠りの国のリトル・ニモ

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 1907年2月17日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 雪合戦の回廊をなんとか抜けて、一行は雪が積もる丘にやってきました。美しいそりが置いてあります。フリップは「お、これはトボガンだな、知ってるぜ」と、そりの種類の名を口にしています。

 

 以前にも「イエロー・キッド」に登場しましたが(イエロー・キッドとアイススケート - いたずらフィガロ)、トボガンとはカナダやアメリカの先住民族が使うそりです。上のトボガンは接地面のデザインがかわいいですが、じっさいのトボガンも、このようにデザインに凝ったものなんでしょう。先端部のくるくるっと曲がってるのが特徴的ですね。

 

 スリートは「さあ、これに乗っていってください、一千マイルを2分ですべっていきます。そのあいだ、わたしはジャック・フロスト様との面会の準備をしておきますので」と、みなをトボガンに乗せます。一千マイルを2分(時速48000キロくらい)という、ロケット以上のスピードにも驚きますが、スリートがその2分のあいだに大広間まで行って面会の準備を整えるというスピードにもびっくりです。どうやるんだ。

 

 スリートはフリップへの忠告も忘れません。「すごく速くすべっていきますよ、じっとすわっててくださいね」。フリップは「こんなのは慣れてるから大丈夫だ、わかってるよ」というのですが、まあ、フリップがじっとすわってるわけないですね。(ところで、じつはスリートは「じっとすわってれば、すぐにここにもどって来れますから」と言ってるのですが、どうしてすぐもどって来なくちゃならないのか、ちょっとわかりません。)

 

 ともかく一行はすべり落ちていきます。すべり始めるとさっそくフリップが「立ってやるぜ! トボガンはまかせろ」と、いきなりスリートとの約束を無視しています。お姫さまは「立ち上がったら承知しないわよ!」と言ってます。ただ顔が笑ってますね。「押すな押すな」的な感じかな。

 

 ニモたちはどんどんすべっていきます。「わあ! スピンしてる!」「立ってるの、フリップ? 立った?」「まだだ、いまやるとこだよ」と、超高速のわりにはみな落ちついています。4コマ目は、紙面の右上から左下に視線を動かした先にあるコマで、その左下の向きにそって、ニモたちもすべっています。

 

 5コマ目は一転して、向きを右に変え、次の6コマ目のほうへジャンプするところです。踏み切った瞬間でしょうか。フリップはまさにその瞬間「立ったぜ! すげえ!」と叫び、ニモは危険を察知して「すわって!」と叫んでいます。で、6コマ目でみんな宙を舞っています。

 

 トボガンはそのまま空を飛んでいきそうな勢いですが、ニモたちは重力に負けてその場に落下するでしょう。そのまま、ニモは自宅のベッドに帰ってきました。部屋の向こうでだれかが(とりあえずママとして訳すと)「ドスンって音がしたわ! 聞こえた? ニモがまたベッドから落ちたのよぜったい」と言っています。

 

 4〜6コマ目は縦長のコマです。ニモたちだけを描くにはちょっと大きすぎ、余った空間は背景描写となるわけですが、白一色の雪山の斜面という、しくじれば単調なものになりそうな背景を、そりのコースを示す線や、斜面の段差の線などを駆使して、コマの内部を分割しコマのなかにリズムを生んでいるように思います。