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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドと馬のいない馬車

イエロー・キッド

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 1897年10月17日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 「イエロー・キッドが仲間たちを馬のいない馬車に乗せる」ということで、イエロー・キッドは走る車のうえに立ち、こっちをむいて笑っています。画面中央、やや左上ですね。

 

 イエロー・キッドは「これで、掃除が難しいカーペットでもほこりをたたき出せるね」と寝巻きで言っています。極端ですね。うしろに差してある大きな旗には「まるでイェールとプリンストンがやるフットボールの試合みたいだ、そこまで荒々しくはないけどさ」とあります。双方の大学から「いやいやいや」と強く否定されそうですが。

 

 車はたくさんのこどもたちを乗せて、通りをかなりのスピードで走っています。車輪が勢いよく回転していますが、前輪のすぐ先に鋲が落ちているのが不安ですね。後輪は男性の背中を踏みつけています。この男性は、そばで逃げまどう人にも左腕を踏まれていて、ここでいちばんの犠牲者かもしれない。

 

 画面右側に、ふきだしが三つあります。いちばん下は、通りの端で驚いている馬が発したもので、「わたしは悪夢じゃない(I am no night mare)けど、まったく死ぬほど怖いね」とあります。mare とは雌馬という意味です。

 

 雌馬の少しうえではヤギや黒猫が車につながれていて、車が猛スピードなので動物たちも地面から浮き上がっています。で、そのなかに犬がいて、ふきだしで「これが楽しいだなんて思えるわけがない」と言ってます。

 

 画面右上には、イエロー・キッドを小さくしたのがふたりいます。イエロー・キッドが世界一周をはじめるときにも登場した、アレックスとジョージですね(イエロー・キッドと世界一周へ - いたずらフィガロ)。そのときは悠長に旗をふってイエロー・キッドを見送っていましたが、今回はイエロー・キッドにつかまってしまい、動物たちとともに引きずられています。

 

 ふきだしは「ボクたち殺されたほうがマシなんじゃないだろうか」。まあ、人間扱いされてませんからね。かれらはいつも『ワールド』紙のホーガン横丁で、ジョージ・ラクスが描くイエロー・キッドと仲間なわけで、アウトコールト作のイエロー・キッドとはいわば敵対関係にあります。『ワールド』で自分の猿真似をするガキどもを放っておくほど、マクファデン通りのイエロー・キッドは甘くない、ということでしょう。

 

 画面の左上には「不安定な街」、右下には「この街は詰んでいる」という文字が見えます。イエロー・キッドが来たから不安定になったのか、以前から不安定なのかはわかりません。で、いま気づいたんですが、はたしてここはマクファデン通りなのだろうか。世界一周からニューヨークに帰ってきて以降、「マクファデン通り」の文字を見ていないような...。イエロー・キッドたちが世界一周してるあいだにすべて取り壊されてしまったのかな。遊び場を求めてさまようイエロー・キッドたちなのだとすると、すこしさみしいですね。