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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとジャック・フロスト

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 1907年2月24日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 トボガンにのって山をどんどん下ってくると、ものすごいお城にたどり着きました。中央に堂々とした塔をそなえ、それよりは小さな塔がいくつも立ちならび、全体としてシンメトリー構造をなしたお城です。建物の色は薄暗いですが、お城の背景にはカラフルな光の(氷の?)アーチが見えます。

 

 トボガンはこのまますべり下りていって、下のほうで口を開けているお城の入口へと吸い込まれていくでしょう。そのようにコースができています。ニモたちは画面の右側からあらわれました。先頭のニモが「あれがジャック・フロストの宮殿?」とたずね、すぐうしろのお姫さまが「そうよ、アイスクリームで建てられているの」と答えます。いちばんうしろのフリップはそれを聞いて「アイスクリーム! どんな味がすんだろうな」とうれしそうです。

 

 ふきだしの順番はオーソドックスに左から右へと流れていて、先頭のニモが素朴な質問をし、それに対してお姫さまが答え、それに対してフリップが食い意地を発揮するという展開です。それぞれのキャラクターに合った発言だと思います。かれらがもし、画面の左側からあらわれたのだとすると、オーソドックスにはフリップから発話しなければならないことになりますが、1コマ目から食い意地がはってるニモというのはちょっと違和感があるかな。

 

 トボガンは2コマ目で無事にとまりました。出迎えの従者がニモたちに近寄り「では、スケート靴をはいてください、ジャック・フロスト様に謁見いたします」と説明します。また、フリップに対しては「タバコはダメですよ」と、場内禁煙であることを伝えています。アイスクリームが溶けてしまわないようにでしょうか。そもそも謁見の折りにタバコを吸いながらというのは無礼でもありますね。しかしフリップは「禁煙かよ! なんだよ、おれを締め出そうってのか(that freezes me out)」と、タバコを吸えないことが我慢なりません。

 

 従者はフリップを無視して、お姫さまに「このあたりを見て回ったら、ここが眠りの国のなかで最もすばらしい場所だと思うはずです」としゃべっています。すぐ下に見えている6コマ目のことかな。6コマ目はやっぱり、氷の巨人がすわっているのがすごく気になりますが、まあこのコマについてはのちほど。

 

 3コマ目にもどります。フリップは「おれは立ち去るぜ、タバコ吸えないんじゃあな。それに考えがある」と言ってます。じっさい、次のコマからフリップはいなくなってしまいました。

 

 4コマ目でお姫さまが「フリップはどこに行ったの?」とニモに聞いていて、ニモは「タバコが吸えないもんだから出ていったよ、それに、なにかたくらんでいるみたいだよ」と答えています。それお姫さまに聞かれるまえにとっとと言えよ! と思わなくもないですね。ニモはフリップのたくらみを楽しんでいるのかもしれない。

 

 従者はニモにスケート靴をはかせながら「ここの氷が火事になって、宮殿がほとんど焼け落ちてしまったことがありまして、それ以来禁煙なのです」と説明しています。「フリップがなにかたくらんでいるみたい」という会話をそばでしているタイミングでこれを言うあたり、宮殿の未来にすこし不安を感じてしまいます。

 

 ともあれ、みな準備ができました。お姫さまとニモはスケート靴ですべりながら、従者のあとをついていきます。ニモは難なく歩行できていますね。ニューヨークのこどもたちなら当然のスキルなのかもしれないですね。かれらは歩きながら、いなくなったフリップのことについて話しています。「どうしてフリップが悪さすると思うの?」「だってあいつのおじさんが太陽を呼べるってこと、あいつ知ってるんだもの」「太陽はやめてください!」。

 

 フリップが姿を見せないまま、ニモたちは6コマ目に到着しました。従者が向こう側にすわる巨人を紹介します。「あちらがジャック・フロスト様です! 冷ややかなお方です(He's a cold mannered gentleman)、握手はなさらぬように。握ればふるえあがってしまいますよ」。

 

 「冷ややかなお方」とはこの場合、冷淡な態度の人、という比喩であるまえに、低温という身体的特徴をもつ人、ということですね。でも、ジャック・フロストは冷ややかだと言われたニモは、ちょっと恐れをなしているのか、「ここでスケートしたいんですけど、ジャック・フロストは気にしますか?」とたずねています。ジャック・フロストは、顔の見た目はやさしそうですけど、デカいからね。両隣に白熊がついているし。

 

 おそらくニモは、ジャック・フロストの威厳を目の当たりにし、畏怖を感じて目覚めてしまったのでしょう。お父さんからは「スケートしたいんなら起きろ」と言われています。

 

 フリップは何処へ...。