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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとキャンディ諸島

眠りの国のリトル・ニモ

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 1907年5月5日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 いちばん下のコマ、褐色の肌のこどもたちが大勢いるのに目を奪われますね。ここはどこなのか。

 

 1コマ目、フリップが「なんにせよこの古い軍艦から降りれるのはうれしいぜ」と言っています。降りるようですね。船員が「陸が見えました、キャンディ諸島です! 眠りの国でもいちばんの美しさですよ」と伝えていますので、キャンディ諸島に上陸ですね。

 

 フリップは2コマ目のいちばん左で「あいつのいうことはどうだっていいよ(Never mind what he says)」と言ってます。島の美しさには興味なさげです。ただ「オレたちゃしばらくここにいるぜ(We'll stay right here)」とも言っています。上陸はしようとしているのかな。軍艦を降りたいとも言ってたし。船員はとにかく島の美しさを伝えたいのか、「船橋にのぼったほうがいいですよ」と、ニモたちをデッキのさらに高いところへと案内しようとしています。

 

 いや、あるいは、フリップの Never mind what he says ということばは、右にいる船員の「船橋にのぼったほうがいい」ということばを受けてのものかもしれません。つまりフリップは、「(船員は船橋にのぼれとか言ってるが)そんなことに従う必要はない。オレたちゃしばらくここにいるぜ」と言っているんじゃないか。

 

 フリップが言う「ここ」とは、島なのか、それともデッキの今いる場所のことなのか。代名詞のたどるさきが左のふきだしにあるのか、それとも右のふきだしなのか、最終的には文脈で判断するしかありません。

 

 べつの船員がやってきました。「わたしと船橋にのぼりましょう。島の族長がわたしたちをむかえにきます。さあ、船橋へ」。キャンディ諸島の人々にはすでに連絡済みのようです。それと、この船員のふきだしのむこうには小舟が何艘も見えますね。島民たちがむかえにきたんでしょうかね。

 

 フリップは「ここにいようぜ! 族長なんかこわくないね」としゃべっています。島民たちが近づいてくるなかでのセリフですので、やっぱり「ここ」っていうのはデッキのことなのかも。軍艦の船員たちは、ニモたちは族長をこわがるだろうから船橋にのぼらせて族長と距離を置くべきだ、と考えているのでしょう。しかしニモも「ボクは族長を見たいな、こわくないよ」と、フリップとおなじことを言っています。

 

 船員はわたしたちのほうを向きながら「ジャングルの連中は、危害は加えないが、いたずらが好きなんだよなあ」と説明してくれています。いたずら好きということは、フリップとバトルになるかな。

 

 5コマ目、島民が柵を乗り越えてフリップと握手しています。フリップも「よお、ぼんくら(Hello! Jake)、調子はどうだい」となれなれしい挨拶です。島民たちはどんどんデッキに上がってきて、お姫さまは「デッキを離れたほうがいいんじゃない?」とニモに言いますが、ニモは「ボクはここにいたいな、おもしろいと思うよ。乱暴されたりしないよ」と、島民たちと積極的にかかわるつもりですね。

 

 キャンディ諸島の島民たちは野蛮人であり、ニモたちとは異なって文明化されていないので、どんなことをするかわからない、場合によっては暴力を受ける可能性がある...といった考え方が、物語の前提になってますね。ポリティカル・コレクトネスの点でナイーブさは当然ありますが、ただ、自分たちとは異なる相手を恐れる気持ちというのは現代にもあり、完全になくなることはないかもしれません。フリップやニモに希望を見出したい。

 

 船員は「やあ、族長、お会いできてうれしく思います」と言っていて(6コマ目)、視線のさきを見ると、他の島民よりも大きな男がデッキに上がってきているところです。「わが王国へ歓迎いたします、でもそのまえに、うわさのニモに会わせてくれないか」としゃべっていて、しゃべりながらの挨拶に、どこかこう形式ばっていない、ざっくばらんな印象を受けます。

 

 ニモとお姫さまは島民たちに囲まれています。こどもたちでしょうか、ニモたちと背丈がかわらない。フリップは「こら! オレの葉巻をとるな!」と叫んでます。島民のひとりにタバコをつかまれているようです。

 

 7コマ目、族長はニモを抱えあげ、「きみがニモか! わたしの王国を見せてあげよう!」と熱烈歓迎してますね。その左どなりで船員が「大丈夫ですよニモ、彼は安全です」と、心配することないと告げています(この発言自体が失礼ではありますが)。

 

 コマのいちばん左では、べつの船員が「ボートを降ろして上陸だ」と大声をあげています。船員たちもしばらくここで過ごすようです。

 

 コマの右側では、フリップが「おい、葉巻を返しやがれ、さもないと痛い目みるぜ、聞いてんのか?」とけんか腰ですね。島民たちは笑ってばかりで、一言もしゃべらない。フリップの葉巻を奪うとはなかなかの強敵で、今後もフリップの活躍が見られそうです。