いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと巨人のプロポーズ

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 1905年9月23日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 「最初の夫はとても背が高かったわ。あなたを夫として愛することはできるでしょうけれど、それでもわたしは背の高いひとが好きなの。あなたの背が高くさえあれば...」「あ...その、ごめんよ。わたしもきみを愛してるよ、きみはうつくしい、うん」。なんともつらい場面からスタートです。男はプロポーズをやんわり否定されたようですね。

 

 勝手な想像ですが、この男はもしかしたら、相手の女性の高い身長に惹かれていたのかもしれない。背の高い女性を好きになるひとはいますからね。わたしの身の回りにも「巨女好き」を公言してるひとがふたりほどいます。

 

 それはともかく、女性にプロポーズを拒否されたこの男は、ある店に入り、カウンターに立つ店員に「背が高くなる飲み物はありますか」とたずねます。薬局でしょうかね。店員は「背が高くなる? もちろん! パイントでもクォートでも、ガロンでもお売りしますよ」と答え、飲み薬を量り売りできることを伝えます。

 

 帰宅した男は、女性に手紙をしたためます。「愛するあなたへ。薬を一時間ごとに飲んで、背を高くしようとしています。すごく効いてますよ! 今夜には十分な背の高さになるでしょう」。背が高くなってしまえば自身の巨女好きの気持ちは満たされなくなってしまいますが、そんなことより相手の好みを優先したわけですね(勝手な想像ですが)。

 

 で、4コマ目、巨人が画面奥から手前へと歩いてきています...。それまでの男性像との落差がすごい。この男を見上げるひとがちかくに立っていて、いい比較になっています。すくなく見積もっても3メートルはあるでしょうね。求婚相手は二階の窓からからだをのり出し、「かれだわ! うそでしょ! なんて背が高いの!」と驚いてます。

 

 男は腰を大きくかがめて女性に近づきますが、女性は「いや! むり! 結婚なんて考えられませんわ!」と強く否定します。男は「そんなひどいこと言わないでください!」と悲しみますが、さすがにこの身長は規格外すぎますね。次のコマでも、女性は顔をおおいながら「結婚はできません、あなた背が高すぎるわ」とくりかえします。

 

 男はそんな女性を見て、長すぎる足をソファーのうえで器用に折りたたみながら「すまないと思う」と言うものの、7コマ目ではあきらめきれず「考え直してください、わたしといっしょになりませんか」と再びプロポーズです。しかし、女性はなにもいわず、コマの外へと退場していきます。残念。

 

 このあいだも、男の身長はどんどん大きくなっているようです。「家に帰ろう。もうダメだ、彼女の決心はかたい」という頃になると、あまりのからだの大きさに家の玄関を這って出なくてはならないほどです。

 

 9コマ目、男はつぶやきます。「それにしても、女性をよろこばせるってのは難しいもんだな」「彼女はとりわけ難しいよ」「最善は尽くしたさ、彼女だってそうするように言ったんだし」。最後のセリフは、彼女の好みに合わせて背を高くしたことを言ってるんでしょう。かれはこのあとどうするんでしょうね。さっきの店に、背を低くする薬が売ってあればいいですけど。