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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと箱の中身はなんでしょね

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 1907年7月14日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 前回、ニモたちは海軍の人々といっしょに眠りの国の王のもとへ帰るところでしたが、島のこどもたちがフリップを車で連れ去ってしまい、あわてて小舟を引き返したのでした。

 

 今回1コマ目を見ると、どうやら車がこちらに走ってきていますね。前回のラストは、島の族長が車を追いかけジャングルへと消えていく場面で、そのときの構図そのままに(左奥に車、右手前に小舟)、今回は車がこちらへやってきました。

 

 族長がなんとか車に追いついて、つかまえてきたのかな...と思って車をよく見てみると、おかしなことに乗っているのはひとりだけです。それを見た小舟のうえでは「フリップがきたぞ!」「フリップだ!」「大きな箱をもってるぞ」とさわいでます。フリップだけもどってきたようですね。後部座席には四角い箱が見えます。

 

 2コマ目、フリップが到着です。「おれのことは気にするな、それよりその箱を小舟にのせてくれよ」だそうです。海兵たちが「重いな、なにが入ってるんだ」といいながら運ぶなか、ニモとお姫さまは「なにが入ってるのかしら」「バナナじゃないかな」と、フリップが連れ去られたことはもはやどうでもよく、目の前の疑問に集中しています。

 

 船長は「急いでくれ、遅れてるんだ」と、早く出発したい様子ですね。画面いちばん右にいる海兵は「知ってたさ、あのガキにつきあわなくちゃならないってことはね。まったく調子のいいやつだよ」とフリップにあきれ顔です。やっぱり、フリップはこう思われてるくらいがちょうどいいですね。まわりから心配されるようなキャラじゃないと思います。

 

 2コマ目の右奥には軍艦が見えていて、ニモたちは3コマ目でこの船に乗り込んでいます。フリップは「こっちこっち」といって、積み込まれる箱を受けとろうとしていますね。ニモは「あわてなくて大丈夫だよフリップ、時間はあるから」とフリップの作業を見つめています。

 

 お姫さまは、海兵に「行きましょう、からだに塗った色を洗い落として、着替えてください! これからお父上のサマーパレスに向かいますので」といわれているところです。「リトル・ニモ」には着替えがほんとに多い。いつもいつも、場面にあわせて舞台衣装を変えています。まあ、王さまに会うわけだから正装しなくてはならないのはわかりますが、島に来たときに腰みのをつける必要はほんとにあったんだろうか。「郷に入っては郷に従え」をやってますよ、というサインなんでしょうかね。

 

 4コマ目、水平線が見えます。もう島から遠ざかっているのでしょう。画面中央にはフリップと海兵がいて、また壁ぎわにも海兵たちが何人か立っています(海兵のひとりが「すごい速く進んでるな」といってます)。とくに急ぎの仕事はないようで、フリップを見ていますね。

 

 中央にいる海兵は「わたしが箱をあけておくから、おまえは着替えてくるんだ、フリップ」といって、箱の側面をこじあけようとしていますが、フリップは「そんなのはするつもりないね、箱をあけるのが先だぜ」と、やはり箱をこじあけようとしています。画面右端の海兵は「あのガキ、着替えなくちゃダメだろ、箱をいじってる場合じゃないぞ」と渋面です。

 

 しかし、いざ箱がひらくと、海兵たちは破顔してしまいました。なかには、島に住むこどもがひとり入っていました。フリップが海兵たちに、それから正装してきたニモとお姫さまにも、このこどもを紹介しています。「こいつがおれを連れ去ろうとしたやつさ。こいつはおれのもんだ」。

 

 ...えー、拉致してきたようですね。これはよくないですね。海兵たちも笑っている場合ではないのではないか。さっきフリップが拉致されたとき、あなたたち心配したんじゃないの? といいたい。島の族長に申し訳ないなあ(読者のわたしが思ってもどうしようもないんですが)。

 

 ただ、このこどもは、自らの状況を完全に受け入れているようにも思えます。この状況にまったく動じてない。島の族長がこれを了承済みなのかもしれない、というわずかな希望を抱くことにします(それでも箱に詰めて運ぶという方法はどうにかならなかったのか。箱からでてきたのはなんとこどもでした! 的な見世物性が優先されたのか)。

 

 画面の奥で、司令官が「上陸の準備をせよ!」と声をあげています。宮殿が見えていますね。次回はふたたび壮麗な建築群が見られることと思います。