読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとネックレス

眠りの国のリトル・ニモ

f:id:miurak38:20161022102233j:plain

 1907年8月4日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 横長のコマが縦に六つかさなった構成です。透視図法の空間のなかで、登場人物たちが横にならび、読者は視線を左右に流しながら、すこしずつ下に降りていくことになります。

 

 ニモたちは船から降りて、これからモルフェウス王のいるサマー・パレスにいくところです。真ん中のフリップが「これは海賊から奪ってきた宝石さ」とリトル・キャンディに説明しています。そういえばそんなことありました。リトル・キャンディは「じゃあそれもって急ごう、遅くなってしまうよフリップ」と、海賊の話には興味がなく、それより遅刻をおそれていますね。

 

 でも、まあ、今回も先には進めない。おなじ場面が六つかさなってる紙面ですので。2コマ目の左端で、軍艦にのる海兵たちが「ニモとお姫さまはかわいかったけど、あのふたりときたら...」といっていて、フリップとジャングル・インプが厄介の種であったと嘆息してます。このセリフは読者に対し、フリップとジャングル・インプをどういう目で見るべきかをあらためて示してくれています。

 

 ジャングル・インプは箱のなかから宝石をとりだしています。ネックレスのような、長くつながれた宝石ですね。フリップは「おいおいおい! ネックレスから手を離せよ! 聞いてんのか?」と怒ってます。

 

 しかし、ニモたちにはそれが見えていません。「宮殿にいかなくちゃ」「でもフリップが遅いのよ、もう行きましょう」「あのジャングル・インプがたくらんでることを確かめようよ」と会話していて、かろうじてニモが、悪いのはフリップよりむしろジャングル・インプだと気づいているようですが、いままさに行われようとしている悪事についてはわかっていない。

 

 画面右端に立つサマー・パレスの家来たちも、こどもたちの状況をまるで把握していません。こどもたちに対して背をむけているし、顔がフレームの外に出ています。

 

 ジャングル・インプはものすごく長いネックレスをもったまま、あたりを走りまわり、ネックレスが円を描きはじめています。ネックレスの一部が家来の足首に引っかかっていますが、かれはそのことにも気づいてないのかな。キャンディも「美しい宝石だね、ダイヤモンド、エメラルド、ルビー、すごいな!」と宝物に目を奪われています。

 

 フリップだけがあわてていて、ジャングル・インプを追いかけます。「あのインプにはちゃんと指導しなくちゃな!」。

 

 ネックレスは家来たちの足をすくってかれらを転倒させ、そのままニモを画面の真ん中に引きよせます。ネックレスの円はまもなく閉じられようとしていますね。フリップは「後悔することになるぞてめえ!」となおも追いかけますが、走る場所が悪く、ネックレスの円の内側に入ってしまっています。お姫さまは「あのふたりは置いていきましょうよ!」と大声を上げますが、やはり逃げられない場所にいるままです。

 

 そんなわけで5コマ目、ニモたちはネックレスにからめとられてしまいました。キャンディは「あんないたずら小僧、どこで見つけてきたんだよもう!」と困惑し、フリップは「後悔するぞこのやろう」とおなじセリフをくり返しています。

 

 家来たちもようやく本腰を入れるつもりのようです。「本気でいかないとつかまえられないぞ」「そうだな、あのインプをひっとらえるぞ」。

 

 大人たちが本気を出したおかげで、インプはあっさりつかまえられました。フリップは「つかまえるだけだぞ! 傷つけてはダメだ! おれがいくまで待ってろ!」とネックレスのなかでもがきます。

 

 キャンディが「どこからつれてきたの?」というのに対し、お姫さまが「フリップがジャングルからつれてきたのよ! ああもう!」とイライラが頂点に達してる感じですね。顔の表情はそれほどくずれていませんが。

 

 ジャングル・インプは、こんな感じで毎回いたずらをするんだろうか。さすがにこればっかりだと飽きるな。ですが軍艦はすでに遠くまでいってしまってますので、一行はジャングル・インプをつれていくしかないですね。

 

 もちろん、たとえば次回エピソードの冒頭で「ジャングル・インプは海兵たちがつれて帰りました」「やれやれ、ほっとしたわ」みたいなやりとりを描いて、インプを物語世界からあっさり退場させることもできるかもしれません(まえにもそんなキャラがいたような気がするし)。はたしてジャングル・インプはどうなってしまうのか。