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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと号泣するジャングル・インプ

眠りの国のリトル・ニモ

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 1907年8月25日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 ニモたちが階段を上がっています。フリップが「ここはなんていうんだ?」と聞くと、キャンディが「喫煙の間だよ。静寂の寺院ともいうよ」と答えています。先頭を歩くのはドクター・ピルで、「王様のところにいこう、われわれをお待ちだ」とみんなを率いています。

 

 いちばんうしろはジャングル・インプですね。かれはこれまでいろいろといたずらしてるわけですが、にもかかわらず、だれも自らの視界にはいるところにジャングル・インプを配置していません。

 

 2コマ目、執事っぽいひとが登場です。「モルフェウス王は静かに喫煙を楽しんでおられる」とのことで、立てた人差し指を口にあてて、静かにするようニモたちに伝えています。ドクター・ピルも「ならば王のじゃまをしてはいかんな」と、歩みをとめます。ここで待機ですね。

 

 でも、静かにするよういわれてもそうはしないのがフリップであり、またジャングル・インプです。フリップは反抗的に「じゃまをしてはいかんだと? 中に入っておれらが来たと伝えようぜ」といって執事たちを困らせます。「王がわれわれに気づくまでは、音をたてちゃいかん」「息も止めてください」。

 

 ジャングル・インプのほうは、フリップがもってるステッキに注目しています。いたずらするつもりでしょう。まわりの話を聞かず、まわりに反対することもせず、ただやりたいことをすぐにやってしまうというのは、フリップよりも対応が難しいですね。

 

 フリップはなおも「中に入ればおれらに気づくんだからいいじゃねえか!」と抗弁します。執事は「ダメダメ! 王様がお休みのときに音をたててはダメなんです!」とあわてて反論です。ジャングル・インプは、フリップの全体重を支えているステッキを見ながら、片足をあげてます。

 

 すると5コマ目、インプはステッキを蹴り上げ、フリップを転倒させてしまいました。執事は「しーっ! しぃーっ! し、しずかにしてくれ!!」とさらにあわてています。ドクター・ピルも「だれだ? しーっ!」と怒ってます。

 

 もちろん怒っているのは執事とドクター・ピルだけではありませんで、フリップがすかさずステッキを手に持ち、ジャングル・インプめがけて振りおろそうとします。執事は「しずかに! しぃぃーっ!」とかけよりますが、激怒のフリップは無言でインプの頭を打ち、インプは驚きの表情です。

 

 「やめろ! やめて! しぃーっ!」と、執事はもう叫んでるようですね。静かにしなくちゃいけないといっていた執事が静かにしてません。それとも、じっさいにはそれほど大声でもないのかな。大声の気持ちというだけかもしれない。

 

 いまのマンガだったら、大きな字で大声を表したり、あるいはふきだしの線を破線にするとかして「大声を出したい気持ちだけど小声」を表したりすると思うんですけど、「リトル・ニモ」の時代のマンガはさすがにそこまで表現が細かくないですね。

 

 フリップの「しつけ」を見て、ドクター・ピルは「わたしの薬ケースはどこだ?」ときびすを返しています。8コマ目ではジャングル・インプが「うおぅうおぅ」と叫んでいて、となりでキャンディが「泣かないで」となぐさめています。インプがふきだしを使うのははじめてかな。ドクターは「アルニカはどこだったかな」と炎症薬をさがしています。

 

 この間、お姫さまはずっと進行方向にからだをむけたままです。視線はうしろのフリップたちにむけていますが、からだは前をむいてます。他のキャラクターたちはみんなフリップやジャングル・インプのほうにかかずらってしまいますが、このお姫さまのからだの向き、またお姫さまの「いつになったらパパに会えるのかしら」というセリフがあるので、騒ぎの「足止め」感がありますね。と同時にお姫さまのクールな性格がわかります。

 

 ジャングル・インプはここで、キャンディやドクター・ピルにも自らの存在をはっきりわからせることができました。お姫さまはまだ認めていないかもしれませんが、インプは今後、ニモたちの仲間と認識されるんじゃないでしょうか。前回インプは周囲にほとんど無視されていましたので、よかったよかった。