いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットとルイス公

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 1905年11月18日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 「ルイス公(Prince Louis)が街で発砲するなんて信じられない。銃声が聞こえたが」。寝床につく男がひとりごとです。するとすぐに、巨大な銃弾が窓ガラスをつきやぶって部屋のなかに入ってきました。「やはりか。イギリス軍艦が13インチの砲弾をぶっ放してきたぞ」。

 

 このルイス公は、5コマ目の「バッテンベルク(Battenberg)」という発言とあわせて考えれば、当時のイギリスの軍人、ルイス・アレグザンダー・マウントバッテン(Prince Louis of Battenberg - Wikipedia)で間違いないでしょう。もとはバッテンベルクという名前でしたが、第一次大戦時にドイツ語風の「バッテンベルク」から英語風の「マウントバッテン」に改名しました。

 

 ルイス公はドイツ系の人ですが、イギリス海軍のトップにのぼりつめました。出世欲の強い人だったみたいです。そうした性格は当時すでに世間に知られていたのかもしれませんね。

 

 部屋のなかに砲弾を撃ち込まれた男は、砲弾を窓のそとへ投げ捨てようとしながら「ルイス公は、やろうと思ったらおまえたちをめちゃくちゃにできるんだぞって言ってたな」とつぶやいています。砲撃の理由として、なにか思い当たることがあるのでしょうか。ルイス公をキレさせたんですかね。

 

 砲弾を投げ捨てる間もなく、新たな砲撃が次から次へと行われます。男は「アンクル・サムはすごく忙しくなるだろうな」などと悠長にかまえていますが、砲撃がいっこうに止まないので、さすがに最後はもうなにもいえず、コマのなかが砲弾で埋め尽くされていくのをどうすることもできません。

 

 ところでこのマンガは4コマ × 4列でできていますが、全体を見渡してみると、砲弾による壁の穴が列ごとに増えていく様子がすぐにわかります。各列の横の連続性が強調されているように思います。また、それぞれの穴もコマのなかでバランスよく開けられていて、白い部屋のなかで黒い穴がよいアクセントになっています。