いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモの寝顔

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 1907年11月24日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 空腹きわまってやせほそっている三人が、ボートに乗っています。「立ってるのもしんどいぜ」「しんどい? ぼくはもうぜんぜんダメだよ、お腹すいたなあ」。

 

 かれらは、引きかえしても意味がないと思っているのか、新しい道を見つけてはどんどん先へと進んでいきます。ニモは「ボートから降りれないよ、疲れたよ」と弱音をはきますが、フリップは四つん這いになりながら「ここにずっといるわけにいかねえだろ、ほら早くしろ」と、ニモを鼓舞しています。その先にインプがいます。かれはボートをこいで、真っ先にボートを降りていて、いちばん体力がありそうです。

 

 一行は、「食料貯蔵庫」とかかれた扉の前にやってきました。食べ物への期待が一気にふくらみます。が、扉の真ん中にはこうあります、「閉鎖! モルフェウス王の命によりリトル・ニモ捜索のため不在」。

 

 一行はがっかりです。「おいおい! おれらをつかまえにいったのかよ!」「ひどいや!! ごりっぱな捜索隊だねまったく!」。あまりのことに、ニモも憎まれ口をたたかずにはいられません。

 

 次のコマは「冷蔵庫」です。しかしここも不在の札がはってあります。フリップは「感謝祭の日なんだぞ!」と憤慨しています、そうか、11月末ですね。

 

 「ベーカリー」前では、「すこしの時間でいいから中に入りてえな」「ボクなら、パイ売り場のひとたちをうんざりさせるほど食べられるよ」といいながらすわりこんでしまいます。さらに「厨房」前では、「七面鳥をごちそうしてくれよ」「ボクにたのまないでよ! 七面鳥なら丸呑みしちゃうな」としゃべりつつ、ボートから降りたときの格好になってますね。空腹すぎてめまいでも起こしているのかも。

 

 すると突然、目の前に巨大な動物たちがあらわれました。七面鳥や豚、エビや貝など、食材になる動物ばかりです。「感謝祭から逃げだしてきたごちそうだよ!」。しかしニモたちは空腹すぎて立ちあがれません。あるいは、空腹がひきおこした幻覚ということも...。マッチ売りの少女的な。いずれにせよ、かれらはまだ食べ物にありつけそうにないですね。

 

 夢オチのコマでは、ニモのお母さんでしょうか、「ニモを部屋まで運んでいったほうがいいわ、眠っちゃったもの。楽しい夕食だったようね!」と、眠っているニモを見て夫に声をかけています。

 

 ニモの寝顔を見たのはこれがはじめてかなあ。めずらしいコマですね。というか、ニモ自身としては夢オチしてないですよねこれは。依然としてかれは、夢のなかで巨大な動物たちを目の当たりにしているはずです。

 

 それにしても、現実でごはんをたくさん食べておきながら、飢え死にしそうな夢を見るとは、ニモは現実の食事に満足していないということなんでしょうか。お母さんの料理の腕を疑問視せざるをえない...。