いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットとラップさん

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 1905年12月27日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 制服姿の少年が、「こちら、ラップさん(Miss Rapp)へのお届けものです。こちらでよろしいですか、マダム?」と、荷物をもって立っています。その前には女性が立っていて、「ええ、わたしがラップです」と答えています。こちらも札のついた荷物を手にしています。

 

 ラップさんが受けとった荷物を開けてみると、金づちが入っていました。「だれかしら、こんなすてきな金づちを贈ってくれたわ」。余韻にひたる間もなく、今度はべつの女性が「こちらにもありますよ、今あなたに届いたばかりなのよラップさん。メリー・クリスマス!」と荷物をもってきました。クリスマスプレゼントなんですね。

 

 3コマ目でも、ラップさんは郵便局員から荷物を受けとります。ラップさんはつぎつぎにやってくる箱を開けていますが、どれも金づちです。ラップさんはそれを小さい順に机にならべながら、「どうしてみなさんこんなものをわたしに贈ってくれるのかしら」と、少々困惑しているようです。

 

 4コマ目になると、もう箱には入りきらない大きさのハンマーになります。「わからないわ、なぜかしら。ぜんぜん使うつもりないのに」「はっきりしてるのは宛先だけですね」。ラップさんの息子でしょうか、家族らしき人も、この状況の理解に苦しんでいます。

 

 大きなハンマーがいくつかやってきたあと、郵便局員がかなとこをもってきました。「かなとこ? だれが贈ってきたのかしら、かなとこで何をすればいいというの」。それからすぐに、巨大なハンマーも到着です。数人がかりで運ばれてきた巨大ハンマーに対し、ラップさんは「いったいこれでどうしろというのよ? だれか教えてちょうだい!」と、もはやクリスマスの楽しさは忘れている様子です。

 

 7コマ目、ついに杭打ち機の登場です。何頭もの馬が杭打ち機を引いてきています。杭打ち機は、まだ遠くにありますがすでに存在感十分で、あれがこれからここに来るのか...とニヤニヤしてしまいますね。もちろんラップさんにとっては不可解きわまりない状況です。「なんということ! あんなもの使いませんよ!」。

 

 ラップさんは目をさますと、「あのいまいましいシーア夫人(Mrs. Sheer)め、あたしのことなんかほっときゃいいのに。レアビットなんかいやだと言ったのにあの人しつこくせがむから食べちゃったわよ...なんて夢なの!」とつぶやいています。sheer には「はなはだしい」という意味がありますので、程度のはなはだしい夢を見たというわけです。

 

 ラップさんがハンマーをもらうのも、彼女の名前 rap(p) が「コツコツたたく」という意味だからです。今回の「レアビット」も言葉遊びエピソードでした。