レアビットとノブさん
1905年12月30日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。
ハゲたおじさんがくつろぎながら新聞を読んでいます。「スー族のまじない師による驚嘆すべき力...岩石やカブに髪の毛や羽や草を生やすことも意のままに。髪のうすい男性が何千とおしよせている...」。
この男性もさっそく会いにいこうとしています。「出かけてきますよビスケットさん、インディアンに会いにね」「ああ、わたしも読みましたよ、うまくいくといいですねノブさん(Mr. Knob)」。
ドアノブみたいな頭ってことでしょうね。ビスケットさんのほうは...体格の分厚さに由来してるんでしょうか。アメリカのビスケットはわたしたちが通常イメージするビスケットとはちがって、スコーンのようなものらしいので(Biscuit - Wikipedia)。
ノブさんはスー族のまじない師のところにやってきました。「族長! 会いにきましたよ。わたしの頭になにか生やすことができたら、あなたを金持ちにしてあげよう。草でもロープでも、なんだっていいんだ」。
スー族の族長は「わたし偉大なるまじない師、小屋に入りなさい、大いなる神秘(Great Spirit)に話しかけてみよう」といって、ノブさんを別室につれていきます。
4コマ目の肌の黒い人が、その「大いなる神秘」なんでしょうか。それともさっき出会ったインディアンの人が変装してるのかな。ノブさんの頭を見ながら「石のようだ、とてもつやつや。治してみよう」と、治療を開始します。
「キーイー! キーイー! コボコボン!」と、常人にはわからない言葉がノブさんの頭上に浴びせかけられています。タンバリンをマレットでたたきながらダンスしてますね。
するとさっそく、6〜8コマ目で、ノブさんの頭部に髪の毛らしきものが生えてきたようです。「あなたすごい! 魔法つかいだ、いったいどうやったんだい、族長!」。族長って言ってるから、3コマ目のインディアンとおなじ人なのかな。シャーマンとして、目には見えない大いなる神秘と交流したということかもしれません。
まあそんなことはノブさんにとってはどうでもよく、帰宅してビスケットさんに頭を見せています。ビスケットさんはノブさんの髪を手でさわりながら、「ステキじゃない!」とにこやかです。
ノブさんは自室にもどり、満足して床につきます。すると翌朝、異変に気づきます。「ええっ? 羽じゃないか! なんてこった!」。どうやら髪の毛ではなく羽が生えてしまったようです。髪の毛を生やすよう、もっと念入りに伝えるべきでしたね。
ノブさんは「理髪師のトニーかい? すぐきてくれ!」と電話します。トニーは「こんなの見たことない」といってノブさんの髪(羽)を切るのですが、次のコマではもう羽がすごくのびています。
ノブさんの前にすわる人は、「わたしにはなにもできません。こんな奇妙なことは、わたしの手に余りますよ」とノブさんに伝えています。医者ですね。ノブさんは「先生、どうしたらいいんでしょう。切れば切るほど羽が大きく育つんですよ」と深刻な面持ちのようです。
ですがノブさん、解決策というか、苦しまぎれというか、ひとつのアイデアを思いついたようです。最後からふたつ目のコマ、立派な建物が描かれていて、その壁に「羽ペン」とか「羽飾り」と書かれています。「フェザー・ファウンドリー」、羽製品メーカーを設立したわけですね。社名は「ジョン・ノブ社」です。
まあ客の立場からすれば、人の頭から生えてきた羽を使った品物を、買いたくはないかなあ...。そのへん、ノブさんは企業秘密にしてるんでしょうか。