いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと暴走列車

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 1905年3月18日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 列車が暴走してますね。見たところ蒸気機関車ではなさそうですが、じゃあ電車かといわれると、架線もないですよね。電池式?

 

 電車はつねに、画面のこちら側に向かってやってくるという視点で描かれています。構図を変化させてもいいような気もしますが、この列車が都市のいろいろなものを破壊しながら突き進んでいることを描くためには、この構図がいちばんわかりやすい、ということでしょうか。

 

 「レアビット」には、暴走する車と破壊される高層ビルがよく出てくるように思います。「制御できなくなったらどうしよう」「倒れてしまったらどうしよう」といった恐怖心がマッケイや当時の人々のなかにあったんでしょうか(ちょっと安易な発想かもしれませんが)。

 

 最初のコマを見てみると、じつはこのマンガ、鉄道の経営者が運転初心者に「運転してくれ」と頼んでいるんですね。「こどもでもできるから大丈夫」つって。なぜかというと、普段の運転手はストライキ中で、経営者としては早く営業再開して金儲けしたいのです。頼まれている男が「できるとは思うけど、スト破りにはなりたくねえよ(I can run it but I don't want to be a scab this strike)」と言ってますので。

 

 利潤追求に熱を上げるあまり、安全性がおろそかになっているのではないか、という不安があったんでしょうね。いまだってそういう不安はありますから。あるいは、高層ビルの建設ラッシュに、当時の人々はバベルの塔を思い浮かべていたかもしれません。