いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと困惑する仕立屋

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 1905年3月22日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 「一着仕立ててくれないか、急いでるんだが、ぴったりなのが見つからなくてね」と、客がやってきます。店員は「お任せください」と自信満々に答えています。

 

 どうしてこの客がぴったりの服を見つけられないかというと、ときどき発作で「バザッザ」になってしまうかららしいんですよ。I have fits occasionally of the bazazzas と言っています。...バザッザっていうのはなんなんでしょう(そもそも「バザッザ」と発音するのこれ?)。手持ちの辞書には載ってませんでしたけど、当時使われていたんだろうか。

 

 2コマ目以降を見ると、このバザッザが「体の大きさや形がぐにゃぐにゃ変化すること」だとわかります。じゃあもうマッケイのマンガにはバザッザだらけじゃないか。

 

 客は「わたしの発作には構わないでくれ、春用の薄手のスーツをお願いするよ」と言ってますが、言ってるそばからバザッザの発作出ました。でも店員は「あれ、変わりましたね、ずいぶんと背が高くなった」と、意外と冷静です。優秀な店員です。

 

 次のコマでは体が縮みます。ついでに「ちょっと、急いでくれるかな?」とイライラし始めました。その後も「ぴったりの服を君に用意できるのかい、あまり待てないんだからね」とか、「そういう服は好きじゃないよ」とか、店員を言葉攻めです。

 

 しまいには「君はダメ店員だ」「もっとまともな店に行くよ」と、店員にとどめを刺します。このマンガは、店員がバザッザという奇妙きわまりない症状それ自体に驚いている話というよりも、店員が次々に変わる客のサイズを目の当たりにして、客にふさわしい服を見つけられず、客に怒鳴られて自信を失っていく話といえます。最後、店員は「もうダメだ!クビだ!」と発狂してしまいます。つ、つらい...。

 

 ちなみにこのバザッザの造形ですが、若い頃から見世物小屋に出入りしていたマッケイのことだから、きっと歪んだ鏡の部屋とかに着想を得たのではないでしょうか。