いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと玉座の間

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 1906年6月24日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 いよいよニモがお姫さまに会えるときが近づいてきました。お供のキャンディはすでに先週、一度お姫さまに会っていて、ニモがもうすぐお姫さまのもとにやってくることを伝えています。先週はしかし、ドクター・ピルが水に落ちてしまい、その驚きでニモが目を覚ましてしまったのでした。

 

 今日のマンガでも、タイトルのコマで家来が「どうしようもないな、まったくあの医者は!(It can't be helped. That old doctor, huh!)」と言ってます。たしかドクター・ピルは眠りの国の人々に「賢人」と尊ばれていたはずですが...。そして今回もなにかやらかしてしまうのでしょうか。

 

 ニモは正装に着替え(これまで何回着替えただろう)、羽飾りのついた冠をかぶります。それからキャンディに、玉座の間をあずかる将軍を紹介されます。この将軍も少年のようですね。

 

 そのとなりでは、ドクター・ピルが「わたしがいなけりゃ彼はこれなかっただろう、エヘン!(If it had not of been for me he should not, now, be here, ehem!)」と威張っていて、家来は「きっと勲章もらえますよ」とおべっかを使っています。明らかに、物語的にヤバい前兆です。

 

 玉座の間の入口は、まるで舞台の袖みたいですね。ニモや将軍たちが、ステージでの出番を待っているかのようです。そして門が開き、鏡のように磨かれた床を歩いていくと、やはり本当のステージのように、上のほうでたくさんの観客が待っていました。

 

 そんななかでドクター・ピルが転んでしまいます。「うわっ、ガラスの床じゃ歩けんぞ(Pshaw! I never could stand or walk on a glass floor)」と足を滑らせて、ニモを巻き込んでしまいました。

 

 いま気づいたんですが、タイトルのコマの左右には分厚い袖幕があります。これも舞台のようです。さんざん待たせたあとで、ようやく幕が開いたと思ったら、顔を手で覆って悲しむお姫さまと渋面の家来たちが登場して期待はずれ、というわけです。仕切り直しですね。まったくあの医者は!